『最後の願い』 光原百合 (光文社) - 2005年03月25日(金)
私たち読書好きにとって、新たにお気に入りの作家を発見した時の喜びって本当にひとしおである。 その高い才能を感じ取れれば感じ取れるほど・・・ まるで、子供たちが遊園地でお気に入りのアミューズメントを発見したかのごとく・・・ 本作は誰が読んでも、お気に入りとなるであろう作品である。 それほど光原百合の素晴らしさがギュッと凝縮された1冊だと言えそうだ。 本作は七編からなる連作短編集であるが、実質は長編と言ったほうがいいのであろう。 読み終わった後の構成力の巧妙さには脱帽。 果たして“大団円で幕が閉じるのであろうか”あなたも是非体感して欲しいなと思う。 光原さんが描くと平凡な人間も“個性的”となる。 1編1編は決していわゆる切ない話のオンパレードではなく、例えば他人に知られたくないような話の方が多いかな。 それを、劇団を立ち上げようとしている度会&風見がまるで当たり前の如く推理を披露し解決する。 本作はいわば、ジャンルで言えば“安楽椅子探偵”ものとなるのであろう。 実際、滑稽ながらも見事に度会&風見コンビが読者を招待してくれる。 各編とも本当に素晴らしいのであるが、とりわけ「最後の言葉は・・・・」が印象に残る。 もちろん大半の光原ファンは謎解き要素だけでは満足していないはずだ。 それよりもむしろ、人との出会いの大切さ・仲間を作ることの重要性を再認識された方が多いのであろう。 私は特にこの点を高く評価したいなと思う。 例えば、これから新学期や新年度が始まる時期である。 本作を読めばひとりひとりメンバー(仲間)が増えていくのが楽しみでもある。 そういった意味あいにおいては季節の変わり目に読むのには恰好の1冊だと言えよう。 光原さんの作品に大きなトリックはない。 人間の奥底に潜むわだかまりが、彼女が描くと心地よく読者に伝わり、払拭されるのである。 人生もドラマである。 光原さんから、その暖かいまなざしを分けてもらった今、明日から劇団φのメンバーのように熱い人生を演じたいなと思う。 評価9点 オススメ 2005年24冊目 ...
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