『れんげ野原のまんなかで』 森谷明子 (東京創元社) - 2005年03月30日(水) れんげ野原のまんなかで 森谷 明子 東京創元社の看板シリーズである、ミステリフロンティアの1冊。 本好きというより図書館好きの方には本当によだれの出るぐらい楽しい本なのには間違いない。 内容的には北村薫や加納朋子の作品と同系等(日常のミステリ)といったらよいであろう。 ただ、主人公文子の個性がやはり先輩たちの名作と比べたら弱いような気がするのは私だけであろうか・・・ 次作以降、偉大なる先輩に本作以上に肉薄することを心から希望したい。 舞台は某地方都市の図書館でその名は秋庭市立秋葉図書館。 市の名前と図書館名が一字違ってるのが物語全体を左右するのであるが、これは読んでのお楽しみ。 最初は些細な話だったのだが、徐々に奥深い話への変化と文子の恋心の描写が出てくるところが読みどころである。 探偵役の能勢さん(既婚であるが)への淡い恋心はもちろんのこと、途中から登場する独身男性との恋模様が多少なりともヤキモキさせるところが心地よい。 これからぽかぽか暖かくなっていく季節柄、図書館でじっくりと没頭出来る1冊であることには間違いないであろう。 森谷さんに聞きたいのは、図書館が舞台だからこそ、きっと読者には買って読んで欲しいという願いが込められているのだろうか? 凄く複雑だろうな・・・ 現実の図書館って私の思い過ごしかもしれないが“事務的”であるイメージが強い。 本作を読みながら、少なくとも図書館の裏側というか細部を学んだ読者が大半であろう。 そういう観点で言えば、図書館利用者のマナーアップにも1役を買っているのかもしれない。 読書って人間に心の平和をもたらせてくれる。 その理由は本作を読めば明確である。 なぜなら、本好きにとっては本作の装丁を見てるだけでうっとり出来得る1冊であるから・・・ 図書館が生活の一部と自負している方には必読の1冊であると断言したく思う。 評価7点 2005年25冊目 ...
|
|