『アフターダーク』 村上春樹 (講談社) - 2005年02月14日(月)
“読みやすいけど理解し辛い。” 従来から村上作品に対する私が持っていたイメージである。 どことなく翻訳本を読んでいるような感じで自分の中に消化できない。 ファンの方には申し訳ないのだが、自分の追い求めてる読書スタイルと村上春樹さんが醸し出すイメージとが微妙に(というかかなり)ずれており、何度か挑戦しつつも一冊も読破したことがなかったが、本作に関してはなんなくクリアした。 本作はまるで“春樹初心者”をターゲットとして書かれたようにも感じられたのは気のせいであろうか? いや、単に以前の残念ながら村上氏の他の作品を読んでいない私には、たとえば氏の変化や進化論等を論じることはできない。 言い換えれば、“楽観的な読者”とも言える。 実際、本作がストレート作品か、あるいは変化球作品か検討もつかない。 物語に登場する浅井姉妹(マリ&エリ)は本当に対照的である。 主役ともいえる妹・マリは深夜にデニーズで読書に耽る。 一方、姉のエリは終始ベッドで眠っている。 姉妹の関係(特に姉の状態)は物語が進むに連れて明らかになって行くのであるが、マリがわずか一晩のあいだに遭遇する事件や人々によって自分自身を見出し、姉との関係の修復に立ち向う点をいわば村上春樹スタイル(と呼ぶのであろう)で描かれている。 失われつつある姉妹の関係の修復が本作の最も読ませる部分である。 失礼な言い方かもしれないが、意外な発見もあった。 たとえば本作に登場のカオリ・高橋・コオロギ。 いずれもが、“人間臭い”のである。 さて、わたしたちのまわりにも取り返しのつかないと思い込んでそのままにしていることってないであろうか? 時代は暗澹としているが、心の持ちようでどうにでもなるのである。 少し“希望”を見出せる所が共感出来た。 率直な村上作品の感想として“人生”というより“世の中”というものをクールかつドライに描写してるなと思う。 ただ、“ハルキスト”のように何回も村上作品を読み返したりするほど感動的な側面を本作には見出すことが出来なかったのも事実である。 “若葉マーク”の私にとっては(笑)、いろんな意味において有意義な読書であったような気がする。 読書の幅が広がったのは事実である。 評価7点。 2005年17冊目 ...
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