『禁じられた楽園』 恩田陸 (徳間書店) - 2005年02月11日(金)
“現代の語り部”という作家を評する形容があるが、現在一般的には宮部みゆき氏か恩田陸氏のどちらかに使われてる場合が慣例となっている。 いわば、作家に対する最大限の賛辞だと思うのであるが、大きな文学賞に縁遠い恩田氏に対して違和感なく使われてるというのはそのファン数の質・量ともに群を抜いていることの証拠とも言える。 読者を物語の世界に引き込む圧倒感は他の追随を許さない点は認めざるをえない。 本作はジャンル的にはホラーになるのだろう。 元来ホラー自体、苦手部門の私なのであるが、恩田さんの後押しで恐さに背筋をゾクゾクさせられながら(笑)読み切ることが出来た。 烏山響一というカリスマ性を持った人物の神秘性が物語を奥深いものとし、読者は捲るページを止めることが出来ない。 途中から舞台が和歌山県の熊野に移される。 ここからがタイトルともなる“禁じられた楽園”の始まり始まり! 近畿地方に住む読者として、物語の雰囲気ととってもマッチしていてより作品に入り込めたような気がする。 あと、登場人物のひとりW大生平口捷の平凡さというか等身大性も忘れてはならない。 絶妙な配役なのであるが、惜しむべくはラストの唐突な展開である。 少し着地点としたら無理があったように感じるのは私だけであろうか。 ディープな恩田ファンの率直な意見を聞いてみたいなと思ったりする。 作中の烏山響一のように恩田陸という作家はファンにとってカリスマ性を持った作家なのであろう。 私的意見で申し訳ないが、恩田作品の楽しみ方について語りたい。 恩田陸の作品は子どもが遊園地で楽しむアミューズメントのようだと思う。 “ジェットコースター”であったり“観覧車”であったり・・・ たとえば本作と『夜のピクニック』や『ドミノ』なんかと読み比べて“その引き出しの多さ”を体感して歓喜の声を上げるべきなのだろう。 まるで作中で捷や律子が“インスタレーション”でハラハラドキドキしたように・・・ 評価7点 2005年15冊目 ...
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