『TVJ』 五十嵐貴久 (文藝春秋) - 2005年02月05日(土)
『FAKE』に続いて読破したが、『FAKE』に負けず劣らず、肩肘張らずに楽しめる極上のエンターテイメント作品に仕上がっている。 五十嵐さんの最も読者に伝わる点は“面白い小説を書こうという努力を怠っていない点”である。 極論かもしれないが、現在、不況の出版業界においてベストセラーとなり得るのには2種類の方法があると思う。 ひとつは作品の文学賞の受賞。もうひとつは作品の映画化(ドラマ化)である。 五十嵐さんがこの作品を書くにあたり、そこまで目をつけたかどうかは定かではないが、本作は2001年にサントリーミステリー大賞優秀作品賞を受賞したもの(いわゆる応募作)の大幅リライト版であるので五十嵐さんもビジュアル的に楽しめるものをと考えて書かれてるような気がする。 ここ数年の小説からの映画化の数は右肩上がりに上がっていると言える。 というのは、慢性的な脚本不足もあるだろう。 また、小説を映画化することによって映画だけでなく、原作本も売れるという相乗効果もある。 しかしながら、はたしてこの作品の映画化は良かったのか?と映画ファンというよりも小説ファンの立場からして異議を唱えたくなる作品も多々あったのが本音である。 そこで“真打作品登場”というわけである。 もし、本作は映画化(ドラマ化)されなかったならば、大きな損失である。 出版界にとっても、映画界にとっても・・・ 私の予想では本作の舞台ともなっているお台場のテレビ局あたりが映画化(ドラマ化)しそうな予感(笑) 少し先を見越しすぎだろうか・・・ 小説の内容については、ここでは細かい内容には触れたくない。 “あの《ダイハード》の女性版!”という宣伝文句で充分であるからだ。 少しだけ語らせていただくが、交渉人“大島”と“少佐”との対決はやはり頭脳的な心理戦として読者の脳裡に焼きついたことだろう。 そう言えば『交渉人』という五十嵐さんの作品もあったっけ、これも読まなくっちゃ(笑) 私自身、必ず映画化されると信じて疑わない。 映画化された暁には、小説では味わえない迫力や同時進行の妙を味わいたいなと期待している。 あなたは読んでから観るか、それとも観てから読むか・・・ 小説ファンのあなたならもちろん読んでから観てほしい。 余談だが、五十嵐さんって結構ロマンティックなんだなと思ったりする。 少しでも由紀子の熱き想いが伝わったならば、“等身大のエネルギッシュな生き方”を明日からは実戦出来るであろう。 ワクワクしながらページをめくってほしい。 評価8点 2005年13冊目 ...
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