『アイム ソーリー、ママ』 桐野夏生 (集英社) - 2005年01月17日(月)
人間ってこんなに邪悪なものだろうか? 読みながらずっとそう感じていた。 巷では3部作と呼ばれているみたいだが、私的には他の2作とは根本的に違うような気がする。 たとえば前2作(『グロテスク』、『残虐記』はそれぞれの実話をモチーフにして語られている社会派作品である。 読後人生そのものについて考えることが出来る心に残る作品である。 本作は実話があるのかどうか定かじゃないが、内容的に重過ぎるし救いがなさすぎるのである。 確かにテンポ良く進むのであるが、読後感は決して良くはない。 いや、早く忘れ去りたいと思ったりしたが正直な気持ちである。 あまりにも容赦なく狂気が読者に迫ってくるので読者は身構える隙もない。 少なくとも、もっと普通の環境で生まれ育った人が変わっていく過程を描いて欲しかったと言うのが正直な気持ちである。 アイ子にはほとんど同情の余地はない。 悪意が無意識的に備わりすぎている。 『「アイ子はお母さんの写真もないんだぜ」と言ったのは上級生の男子だった。卒園してからそいつのアパートに行って、火を点けてやったが、大火傷をしながらも生きているって聞いたのは残念だった。火はあたしの大好きな味方だ。火を点けてしまえば何もかもが焼けてなくなる。』 もちろん、エンターテイメントとして割り切って読めばそこそこ楽しめるであろう。 凄くテンポが良くて登場人物も上手く繋がっている。 しかしながら、はたして読者がそこまで桐野氏の作品に対して切り替えが出来るであろうか。 エンターテイメントとして書くならば、もう少し楽しい話を書いて欲しいな。 個人的な意見であるが、前述したとおり、桐野氏にはもっと人生や世の中を考えさせられる作品を上梓してほしい。 社会派作品として読めば訴えられるものがほとんどなく、物足りないというのが正直な感想である。 本作を読みながら「早く捕まれ〜」とずっと思ってたのは私だけであろうか・・・ 他の読者のご意見を聞きたいと言う点では必読かもしれない。 評価6点 2005年9冊目 ...
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