『となり町戦争』 三崎亜記 (集英社) - 2005年01月16日(日) となり町戦争 三崎 亜記 直木賞作家をはじめ人気作家を数多く輩出している小説すばる新人賞であるが、今回で17回目を数えた。 私だけでなく年の初めに刊行されるのが楽しみとなっている方も多いのであろう。 それほど確固たる地位を築いてきた賞だと言えそうだ。 さて、本作であるがとっても内容的には奥深い作品である。 すばりレビューアー泣かせの作品である(笑) 私の結論としては新しい“スタイル”の作品という点では、伊坂幸太郎氏の斬新な作風に匹敵すると思うのである。 良きライバルとなり得る逸材である。 時代設定は現在より少し先(年号は平成じゃなく成和23年となっている)になるのであろう、主人公が住む町“舞坂町”と“となり町”とのあいだで戦争が始まる。 主人公である北原修路は町役場から偵察業務従事者に任命されるのである・・・ 過去の戦争を書いた作品は数多いが、近未来のそれもとなりの町との戦争を書いた作品なんてお目にかかれるものじゃない。 なんと“戦争で町の活性化をはかろうとしている”のである。 決してSF的な話じゃないし、非現実的なんだけど登場人物がリアルに描かれているのが目につくのである。 三崎さんって、私が思うに繊細な心情描写が持ち味なので、今後は純文学的な作品路線(たとえば堀江敏幸のような)を邁進した方が才能開花するんじゃないかなと思う。 特に作中の主人公と香西との距離感のもどかしさが印象的だ。 終盤明らかになる彼女の兄弟のエピソードには驚いた。 リストラ等、不況の世の中公務員のあり方が問われているが、果たして香西のような仕事に邁進する公務員っているのであろうか? 現公務員の著者の理想とも取れるし反論とも取れる。 このあたり微妙なところである。 作者って本当に平和主義者なんだと思う。 もはや世界一平和な国に住んでいる私たちに戦争って言葉は非日常的な言葉である。 でも世の中は変わっていく。予断を許さない。 作中で主人公の代わりに亡くなる人がいる。 人が殺されていくことの辛さを少しでも感じ取れたらと願ってるのであろう。 読み終えた方の大半はさまざまな思いを胸に本を閉じられたことだと思う。 次作もっと期待して待ちたく思うのは私だけじゃないはずである・・・ 評価7点 2005年8冊目 ...
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