『オレたちバブル入行組』 池井戸潤 (文藝春秋) - 2005年01月13日(木)
初挑戦の池井戸さん、構えて読んだのだが意外と読みやすいのには驚いた。 “警察小説”の第一人者が横山秀夫さんなら“金融小説”の第一人者は池井戸さんに違いないと断言できる作品に出会った。 舞台は大阪、バブルもはじけ銀行不倒神話が崩壊してしまった現在。 主人公の半沢は融資先の倒産による焦げ付きを支店長以下自分へと責任転嫁されるのである・・・ 主人公であるバブル入行組の半沢の気性が読者を刺激する。 正義感が強くて逆境にも挫けない男気の性格。 希望に燃えバブル絶頂期の1988年にに入行した5人の男たちのその後・・・ 本作は銀行出身の池井戸さんだからこそ、その経験を生かしたリアリティ溢れる設定や会話を堪能できます。 ネットで知ったのであるが、第1章と最終章は追加で書き下ろしらしい。 少し不満点はやはり入行前の面接で集まった半沢を含む個性豊かなメンバー(すべて慶応大生)のその後があんまり詳しく描写されていない点であろう。 そのあたりタイトル名と少しかけ離れているような気がした。 しかしながら勧善懲悪的要素を持たせながら、テンポ良く読ませてくれます。 平易なビジネス解説をまじえながら、ストーリーの展開に目が離せません。 特に印象的なのは支店長浅野の妻の行動。 すごく“しおらしさ”が出てて巧みな演出だと舌を巻きました。 私たち読者が働く職場にも不条理な事は多々あると思う。 しかしながら本作の銀行内における矛盾は我慢の限度を超えている。 いわば半沢の意地が読者の意地でもある。 痛快に読め、ストレス解消となる点は高く評価したく思う。 私のように普段ビジネス書を手に取らない人には特にオススメ。 評価8点 2005年7冊目 ...
|
|