『霧笛荘夜話』 浅田次郎 (角川書店) - 2005年01月06日(木)
連作短編集とういか“グランドホテル形式”の小説である。 ある編に脇役となる登場する人物が次の編の主人公となる。 全部で6人の男女が登場。 案内役の老婆の語り口も味があっていい感じである。 まさに浅田ワールドだ。 本作を読めば読者はつつましく生きることの難しさと素晴らしさを体感出来る。 生きるって本当に難しい。 しかしながら不幸を背負いつつもひたむきに生きている姿が涙を誘うのである。 圧巻は最終篇である。 各篇のひとりひとりの生き様はもちろん、最終篇であからさまとなる管理人である老婆・太太の霧笛荘に対する愛着が一番感動的であった。 ふと自分の毎日の生活を顧みてみた。 どこか自分に甘えて生きていないだろうか? たとえ満たされた一生でなくても、魅力的な人間として光り続けたいという強い意志を感じ取れた。 本作は浅田氏にとっても思い入れの強い作品であると思われる。 というのは3つの時期に分かれて雑誌に掲載されているからだ。 最初の3篇が1994年に雑誌掲載、4篇目が1999年、5〜7篇目が2004年に掲載されている。 3時期とも雑誌の名前が違うのである。 最初の2雑誌は途中廃刊となって名前を変えている。 出版社も背に腹は変えられない。 “苦節10年、やっと本が出た!” 本作のサイドストーリーである。 是非、出版不況と作家の苦しみを噛みしめながら本作を手にとって欲しい。 必然的により一層の感動が得られることであろう。 評価8点 2005年4冊目 ...
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