『さまよう刃』 東野圭吾 (朝日新聞社) - 2005年01月02日(日)
どちらかと言えば、エンターテイメント系の大作が主流だった東野氏であるが『手紙』あたりから社会派作品を発表している。 本作はサスペンスフルな社会派作品に仕上がっているが、読者によってはかなり重く感じられる方も多いかもしれない。 覚悟して読むべきであろう。 もちろん登場人物ひとりひとりに感情移入が出来る点は東野氏のレベルの高さを表している。 ただ、氏の他の代表作と比べたら全体的なまとまりには欠けてるかなというのが正直な感想である。 あまりにもテンポが良すぎるのである。 以前ある女優が東野氏との対談で下記のように話していたのを思い出した次第である。 「先生の作品は一気に読んでしまうのがもったいないような気がします」 まさしくその通りであるのだが、困ったことに一気に読めてしまうのが東野作品の特徴である(苦笑) 登場人物ひとりひとりの葛藤が本当に理解できるだけに、東野氏の器用貧乏さが目立った作品だとも言えそうです。 というのは、どうしても社会派作品の為に問題提議が大きすぎるような印象は拭えないのである。 例えば、長峰(被害者の親)の立場だったら長峰の気持ちが良くわかるし、犯人の親の立場だったら彼らの気持ちもよくわかる。 注目すべき点は、刑事の気持ちかな。 これはやはり読者の代弁者的な気持ちを吐露していてるのが良かったような気がする。 私の結論としては・・・ 少年法、抜本的に考え直すべきではある。 でもやっぱり長峰の行動って肯定は出来ない。 気持ちは本当によくわかるのだけど・・・ 常軌を逸した行動だったと捉えるべきであろう。 ただ、そういう点では単行本の“帯”は不要なのかもしれない。 裁く権利は誰にあるのか? だからやはり社会派作品というよりサスペンス作品として割り切って読んだ方が楽しめる作品なのかもしれません。 東野氏も読者に結論を求めてるわけじゃなく問題提議をしてくれていると思って読むのが賢明な読者なのかもしれないな。 そう私たちが普段考えている不条理なことを小説という手段を通して・・・ 明日からは三面記事を今まで以上に丹念に読むことになりそうだ。 本書を手に取った大いなる収穫である。 評価8点 2005年2冊目 ...
|
|