『アキハバラ@DEEP』 石田衣良 (文藝春秋) - 2005年01月01日(土)
昨年の石田氏は4作品もの新作を刊行、それぞれ違ったジャンルの作品であった。 そのトリとして出された本作であるが、唯一の青春小説となった。 私的には、氏の躍動感あふれる文体には青春小説が一番よく似合うと思っている。 石田氏は本作を通して“夢を持ち続けることの大切さ”を読者に訴えている。 本作は氏の代表作である『池袋ウエストゲートパーク』と同じく勧善懲悪型の作品であるが、突出した魅力的な登場人物はいない。 池袋シリーズでのマコトやタカシのように読者が魅せられる人物は皆無なのである。 たとえば、本作のページ、タイコ、ボックスひとりひとりを取ってみると個性的ではあるが少なくとも魅力的ではないような気がするのである。 唯一の例外は女性であるアキラぐらいかな(笑) 読者は6人が一体となってひとりのキャラを創り出していると捉えるべきであろう。 ひとりひとりが一人前じゃないから読者も否応なしに肩入れして読んでしまうのである。 石田氏も第2のマコトやタカシはいらなかったのであろう。 しかしながら、オタクな人物でもここまで溌剌と描けるものだろうか。 このあたり石田氏の術中に嵌ったような気がする。 私が特筆したい点は、本作が約3年前から連載されてたという点である。 石田氏の才能からして雑誌連載(別冊文藝春秋にて約2年半連載された)なので世の中の時流に合わせてどのようにでも書けるのであろうが、すごく現在にマッチングしているような気がしてならない。 そのあたり氏の“先見の明”を称えたく思う。 ただ、今こうしてネットにて感想を書いたり読んだり出来る読者には理解が許容範囲内であろうが、たとえば普段ほとんどネット生活に縁のない方が読まれたらかなりチンプンカンプンの世界かもしれないな。 そのあたり自分のファン層を充分にマーケティングされてると思うのであるが・・・ 物語は前述したオタク6人がアキハバラ@DEEPという会社を興し、AI型サーチエンジン“クルーク”を開発する。 ところがそのクルークが盗難されてしまうのである・・・ ページを追うごとに団結心が強固となって行くメンバーたちにページを捲る手は止まらない。 はたして傑作サーチエンジン“クルーク”はどうなるのだろうか? 7人目の“アキハバラ@DEEP”の社員になった気持ちで是非読んで欲しいな。 そう手に汗握らせながら・・・ 評価8点 2005年1冊目 ...
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