『別れの後の静かな午後』 大崎善生 (中央公論新社) - 2004年11月10日(水)
端正な文章に定評のある大崎善生さんの最新恋愛短編集である。 今回のテーマは別れと出会い。 過去の悲しい別れ(というか死)に浸る話もあるし逆に誰かの死を通してより仲睦まじくなっていく話もある。 大崎善生さんの作品に没頭してる時って変な表現かもしれないが“読書に恋愛している瞬間”であると思う。 それほど彼のの文章は美しい。 人は様々な別れを経験して成長して行くのだろう。 映画やドラマはどうしても演じている人の個性が前に出てどうしても客観的に観てしまうが、小説の場合は自己に置き換えて主観的に見ることが出来る。 本を読むことによって何かを吸収し、豊かな心を養えることって多い。 恋愛小説ってどうしてもその時恋愛しているか否か、あるいは恋愛してても絶頂期か倦怠期かによって感じ方が違ってくる。 大崎善生の作品を読めば、読者により過去の自分に浸ったり、あるいはこれからの自分の将来を垣間見たりと本当に哀しい話が多いにかかわらず没頭出来るのである。 それは読者がやはり哀しい話であると予期して身構えているからであろう。 いわば、哀しい話を心地よく享受しているのである。 ただ、既読の過去に出た短編集(たとえば『九月の四分の一』や『孤独か、それに等しいもの』)に比べるとやはり印象度というか胸の痛み度は薄いかもしれないなというのが本音である。 私なりに原因を究明してみた。 どの編も約30〜35ページと短めで主人公の描写がやや唐突で違和感を感じざるを得ない。 そのために感情移入しにくくなっているのである。 枚数が少ない為に、少し予定調和に徹しすぎて、物語部分のきめの細かさが欠けてるような気がした。 全6篇中、一番気に入ったのは「空っぽのバケツ」である。 読後、凄く前向きになれる作品で出来るならラストに読んで本を閉じたかったな。 これからはこう言った作品も必要となってくるであろう。 大崎善生さんもそろそろ転換期に来てるのかも知れない。 果たして私は贅沢な読者なのであろうか・・・ あなたも“静かな午後”に読んでじっくり考えて欲しい。 評価7点 2004年101冊目 ...
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