『鬼あざみ』 諸田玲子 (講談社文庫) - 2004年10月11日(月)
諸田さん自身公式サイトの作品紹介にて「俺たちに明日はない」のボニーとクライドを思って書きましたとある。 まさにその通りで大ノワール小説となっている。 江戸中期、寛政の改革の頃、実在したといわれる窃盗軍団の鬼坊主一味の活躍を描いている。 頭の清吉は実在した模様であるがなんといってもヒロイン鬼あざみことおもんの破天荒な生き様が読者の脳裡に突き刺さる。 おもんの人生って壮絶でドラマティックだ。 誰にでも人生のターニングポイントとなったシーンて多かれ少なかれあるであろうが、本作においてもおもんが故郷から出奔した日に見た打ち首(“葵小僧”)によって彼女だけでなく鬼坊主一味の人生も変わるのである。 決して誰も真似は出来ない。 それほど吸引力が強く魅惑的な女性である。 一番影響を受けたであろう頭の清吉のセリフを引用したい。 だが、今はちがう。おなじことを訊かれたら、胸を張って答えるだろう。 いろんな読み方が出来る作品である。 エンターテイメント作品に徹して読まれるのもいい。 いや、それが一番かもしれない。 第一部の叔母の地位を奪う過程のシーンなんかハラハラものである。 私は一味の友情というか“団結心”に当時の庶民の生活の苦しさが反映されてるんじゃないかなと強く感じた。 少しでもその強靭な精神力を分けてほしいなと思われた方も多いんじゃないかな。 ただ、女性が読まれたら賛否両論かもしれないな。 それだけ主人公が強烈すぎるのである。 少しでもおもんの心意気が伝わればいいとは思ってますが・・・ <太字>男性が読まれたら“悪女”に酔いしれることが出来るであろう(笑)太字> 悪党軍団である鬼坊主一味の活躍が当時の若者たちに人気を博した点は、当時の本当に苦しい世相を反映している。 つまるところ、だれが悪で、だれが悪でなかったのか。いや、そうではない。だれ一人、抗うことができなかった。抗う意志がなかったのだ。悪に魅入られ、体の芯を燃え立たせて駆け抜けていった若者たちに、餞の言葉などかけられようか・・・。 諸田さんの作品は約半分読破したが、あらためてその引き出しの多さに驚いたことを最後に書き留めておきたく思う。 評価7点 2004年91冊目 ...
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