『夜のピクニック』 恩田陸 (新潮社) - 2004年09月27日(月)
やっぱり恩田陸は凄かった。 近年、いろんなジャンルの作品を書いて、ますます成長振りを読者に披露してくれている恩田さんであるが、ズバリ本作のような青春小説が一番彼女によく似合う。 並の作家であればただ単にああ懐かしいなあと思うだけかもしれない。 しかしながら恩田陸が描くと1ランク上の世界に読者を引きずり込んでくれる。 読者も自分の実年齢を忘れて読み耽る必要があるのである(笑) 物語はいたって単純である。高校生活最後の一大イベント"歩行祭"・・・たった一晩だけの話である。高校生の男女の主人公2人を機軸として展開している。 主人公の名は融と貴子。 ところがこの2人がとっても読者のハートを射止めてくれるのであるから恐れ入ったものだ。 2人の関係は異母兄弟にあたる。それも同じ年である。 とっても繊細で多感な時期に直面している2人。 はたしてお互いの気持ちは分かり合えるのであろうか・・・ 人間って“年を取る事だけが平等かな”と思うときもある。 でも恩田さんの作品を読めば本当に読者が主人公(男性読者であれば融、女性読者であれば貴子)になりきれるから凄いものだ。 凄く貴重な体験をさせてもらった。 あの頃が懐かしいとかそういうレベルではなく、まさしくというか年甲斐もなく理想の少年像(少女像)を主人公の2人に見出している自分がいるのである。 融(貴子)の足が痛めば自分の足が痛んだかのごとく感じられるのである。 きっと主人公2人に年甲斐もなく教えられる点がかなり多かったと思うのは私だけであろうか。 歩行祭が終わる。 本作を読めば否応なしに“あの頃の彼(彼女)はどうしてるのだろう?”“元気でやってるのかな?”と遠い自分の過去を振り返ってしまう。 自分の学生時代の友達を忍や美和子に見出してる方もいらっしゃるだろう。 いずれにしても、真っ直ぐに物事を捉えて見据えることの重要さを教えてくれたな。 恩田さんに感謝したく思う。 人生も長〜い“ピクニック”のようだ。 少しでもリラックスして乗り切るお供に恩田作品って最適かもしれない。 彼女の作品はある時は湿布薬の役目もある時は缶コーヒーの役目も出来る事請け合いであろう・・・ 評価9点。オススメ 2004年85冊目 ...
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