『ファミリーレストラン』 前川麻子 集英社 - 2004年09月12日(日) ファミリーレストラン 前川 麻子 何かを感じ取りたい方には是非手にとって欲しい作品だと言えそうです。 私にとっても初読み作家だったので少し前川さんのご紹介をしたい。 1967年生まれの前川さんは幼少時から舞台に立ち、現在でも小劇場を中心に脚本家・女優として活動中。 2000年『靴屋の娘』で第6回小説新潮長篇新人賞受賞で作家デビューしている。 主な作品として『これを読んだら連絡をください』(光文社)、『すきもの』(講談社)、『劇情コモンセンス』(文藝春秋)、『ネイバーズ・ホーム・サービス』(集英社)がある・・・ 人生・家族・恋愛、誰もが生きて行く上で避けられぬ事。 本作での大きなテーマとなっている。 避けられないからこそむずかしいんですよね。 その問いにあるひとつの答えを前川さんは本作にて導いてくれた。 たとえ前川流であろうが読者には模範解答であるに違いない。 主人公の公子は冒頭では7才の小学校低学年である。 2番目の(前の)お父さん三枝を選ぶか3番目の(新しい)お父さん桃井を選ぶかを母親から強要されるところからスタートするのである。 本当に不幸な主人公である(笑) そこから血の繋がらないお兄さん(3番目のお父さんの甥)との同居と公子の恋愛模様を約25年間を描いているのだが、彼女には実はお父さんが3人いる。 ラストの母・和美の葬式に始めて産みの父と対面するが直前まで2番目の父であった三枝が産みの親であったと信じていたのである。 内容的には暗いイメージがあるかもしれないが悲壮感のある小説ではない。 どちらかといえば前向きにというか溌剌と生きている家族を活写している感じかな。 悩みながらも人生に妥協をしていないそれぞれの登場人物が共感を呼ぶ。 とりわけ、娘のボーイフレンドと一緒に酒を楽しく飲める母・和美の存在感って大きい。 男性が読めば若干わかりづらい面もあるのですが、女性が読めばかなり共感出来るはずです。 終盤の公子の一郎への想いの募り、是非読んで感じ取って欲しいな。 いっちゃんは、あたしの大事な家族でもあるけれど、あたしの人生における最愛の人だし、こんなに愛せる人と出逢えたってことは、あたしにとって、かなり幸せなことなんじゃないかと思う。 内容的には違うのだけど、読者に対する強い訴えかけという点において重松清さんの初期の代表作『幼な子われらに生まれ』の女性作家版だと位置付けたく思う。 私の無味乾燥なレビューはほどほどにして・・・ さあ、あなたもページをめくってください! 読後、今以上に強靭な精神力が宿ると確信しております。 評価9点。オススメ作品 2004年80冊目 (新作54冊目) ...
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