『センセイの鞄』 川上弘美 文春文庫(再読) - 2004年09月05日(日)
誰にでも思い入れの強い作品というものがあるであろうが、私にとってはこの作品はとっても思い入れの強い一冊である。 読書好きのあいだでは読まれた方の方が多いと思えるが、敢えて文庫化に伴い再読してみた・・・ 何回読み返しても心に響く名作である。 ツキコさんとセンセイ。 まさに理想のカップルである。 二人がお互いをいたわっている姿に胸を打たれない読者はいないはずだ。 きっと私たち読者が純粋に本を愛するような感覚で二人は愛し合っているのであろう。 愛という言葉を使ったが、本作においては恋という言葉の方がふさわしいかな。 私たちが忘れかけつつあるあの頃の人に恋する気持ち(胸が締め付けられたりあるいは胸がキューンとなったり)を体感出来ることが出来る作品である。 文庫本で約270ページの作品であるが、いろんなシーンが脳裡に焼き付いて離れない。 よくわからないや。 ツキコという名前は“月並み”という言葉から名づけたのかなと私なりに解釈している。 それだけ月並みな事柄が多い。 きっと大勢の読者の方がいろんな過去の想い出があるはずだ。 本作の読み方も十人十色である。 過去の自分の恋愛と比べる人もいるだろう。 現在の自分の周りの人に対する接し方を考え直すのも良い。 私は、本作に出てくるような居酒屋で女性と一緒にきんぴら蓮根をつまみにして一杯飲みながら本作について語り合いたいなと思った。 それが私の理想の恋愛像なのかな。 でも私はビールをついでもらいますが(苦笑) 遠いようなできごとだ。センセイと過ごした日々は、あわあわと、そして色濃く、流れた。 淡々と語られる川上さんの独特な文章。 しかしながら読者にもたらす感動はとっても深遠である。 未読の方は必ずツキコさんやセンセイの魅力に酔いしれるはずである。 本作を読んでツキコさんやセンセイとともに過ごせた時間を強く感謝しなければならない気持ちで一杯である。そういう読み方がこの作品の本来の趣旨であろうと信じたい。 評価9点 オススメ 2004年78冊目 (旧作・再読作品23冊目) ...
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