『犯人に告ぐ』 雫井脩介 双葉社 - 2004年07月31日(土) 犯人に告ぐ 雫井 脩介 《bk1へ》 警察小説と言えばまず、横山秀夫さんのイメージが強いが、雫井さんも負けてはいない。 警察内部の出世争い等専門的なことは横山さんに譲るとしても、に警察全体のあり方を語らせたら雫井さんの方が読み応えのある作品を書くんじゃないかな。 とにかく“ダイナミック”な作品である。 主人公の巻島は本当に“波乱万丈な人生”を送っている。 過去の誘拐事件での不手際(前半部分で描写されている)からいったん前線から退いたが、本作のメインストーリーである連続誘拐殺人事件にて復帰して前代未聞(?)のテレビ局出演を果たす・・・ 彼の男としての矜持はいかに描かれてるのだろうか? 読者はめくるページを止めれない。 まさしく雫井マジックに嵌ってしまうのである。 個人的にはテレビ局の報道のありかたがとっても“臨場感”があったので印象的である。 ライバル局を登場させての展開は読者をよりいっそうハイテンションにさせてくれる。 恐るべき雫井さんの演出であると言えよう。 テレビ局への出演はいわば“巻島対植草”の熱き戦いであった。 少し印象的な場面を引用しますね。 「あなたの言い分はどうでもいいんです」巻島は冷ややかに言い捨てた。「あなたに非があると言うつもりもない。ただ、私にとっては邪魔なんです」 植島の公私混同ぶりは本当に腹立たしい。 しかし願わくばこんな薄っぺらい人間が警察にて仕切っているなんて、せめて小説だけの世界にしてほしいなあ(笑) 雫井作品の醍醐味ってなんなんだろう。 読みやすい文章と予断の許さない展開かな?特に社会派的な要素も多分に取り入れてるのも特徴かな? あと主人公なんかも横山秀夫さんの作品ほど力強くはないが、横山秀夫さんの作品より人間臭く描けてるような気がする。 本作なんかは“報道のあり方”とうい観点から読まれてもきっと楽しめ新しい発見を読者にもたらせてくれるのだと思う。 少し難点を言えば、やはり犯人(バッドマン)の登場の仕方があっけないなあと思われた方も多かったかな。 もっと犯人の過去などを掘り下げて書いて欲しかったと思われた読者もいらっしゃるのだろうと思う。 そこがやはり“一方通行的”だなあと思ったりした。 しかしながら上記の点を差し引いても本作は迫力満点に読者に襲い掛かってくる。 素晴らしい点は警察のみならずメディアのあり方を問うた作品であることであろう。 スマッシュヒットとなった前作『火の粉』と比べると、サスペンス度においては劣るかもしれないが、読後感の良さや感動度においては本作の方に軍配を上げたく思う。 きっと1作1作力をつけて行ってるのでしょうね。 本作はいかに私たちが日常“正義”ってものを欠如して生きているかをもういちど考え直すきっかけとなったような気がする。 雫井さんに素直に感謝したい気持ちで一杯である・・・ 評価8点 2004年71冊目 (新作51冊目) ...
|
|