『ギャングスター・レッスン』 垣根涼介 徳間書店 - 2004年06月23日(水) 《bk1へ》 垣根涼介HPはこちら 本作では生まれ変わったアキが楽しめる! 『ヒート アイランド』で活躍したストリートギャングチームの主役アキが同じく窃盗チームで登場した桃井&柿沢に仲間入り。 窃盗犯として訓練をしつつ成長して行く姿を少し軽めのタッチで綴っている。 『ヒートアイランド』では敵対していたアキこと辻本秀明であるが、『ヒートアイランド』のラストでは、その高い能力を買われ1年後に良ければ仲間入りしないかと打診されて物語が一旦終っていたのであるが、本作では一年間東南アジア等に滞在したあと桃井&柿沢との再会からスタートする。 垣根氏はアキの仲間入りから物語を再スタートさせることを選択したのである。 カオルを含めストリートギャングチームのの再登場を願った読者も多いと思われるが少なくとも本作では登場しなかった。やはり読者の欲目なのであろうか・・・ 一読して特に印象深い点はドライ&クールな柿沢と人間臭さが漂っている桃井とのコントラストが見事である点かな。 きっと読者に安心感を与えてくれる人物設定だと言えそうだ。 物語全体の屋台骨を支えてると言っても過言ではなかろう。 何回かアキと柿沢がぶつかり合うシーンがリアルで見物であった。 もちろんアキのOJT役は桃井が担当。 「試走」で昔の桃井の恋人憲子も登場。柿沢の過去がほとんど露わにされていない点とは本当に対照的だ。 石田衣良の『池袋ウエストゲートパーク』のマコトのように一人称で語られてないのもその要因かもしれないが、アキの魅力が今ひとつ伝わってこないのは残念だ。 きっとタイトル通りレッスン中(修行中)ということなのだろう。 これから桃井と柿沢の良い点を吸収してほしいなと思われた読者が大半であろう。 ただ、今後の展開には大いなる期待が持てる。 例えば「実戦」で手助けしてくれた明美の今後(アキとの再会はあるのであろうか?)や「予行演習」にて登場のヤクザの真一(最後にはブラジルに行きます)など。 もっと言えば、ストリートギャンググループのメンバーの再登場など・・・ 垣根氏の凄さはどのような展開でも読者を釘付けに出来るという点であろう。 例えば、巻末のおまけ作品の「コパカバーナの棹師」には真一がさっそく再登場。 ちなみに「予行演習」は本編の中でもっとも面白かった。 浅田次郎ばりの爆笑キャラ(くだけたと言った意味です)と展開(予想通り破滅的な展開となるという意味です)なんかは垣根氏の得意なキャラのひとりなんだろうな。 付け加えておきたいのは車に対するこだわりというか熱き想いが本作を通しても十分に伝わってくる点である。 私はあんまり車に興味はないのですが、車好きが読まれたらビュンビュン飛ばしてる感覚で読めそうですね、本作は・・・ 『ワイルドソウル』なんかと比べたらスケール感の乏しさは否めないが、きっと垣根氏も肩肘張らずに楽しく書かれたのは間違いないように思える。 そういう点が読者にヒシヒシと伝わって来たら、やはり何年か後にあらためて本作の評価が違ったものとなるのかもしれない。 きっと読者もしばし静観が必要であろう。 評価7点。 2004年61冊目 (新作43冊目) ...
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