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『遭難者の夢 家族狩り第二部』 天童荒太 新潮文庫 - 2004年06月24日(木)

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新潮社:作家の声を聞くへ

ますます深みに嵌って行く姿が赤裸裸かつ衝撃的に描かれている・・・

正直、いろんな話が交錯しているので簡単に書き表わせないのが残念であることを最初にお断りしておきたい。

第一部『幻世の祈り』のラストで事件(麻生一家の変死体)が起こり物語が動き出したが、第二部においては主要登場人物様々な角度から物語が動き出すためにより一層読者も釘付けにされてしまう。
麻生一家の事件を目撃した巣藤浚介の心のバランスが崩れ去り若者に襲われる。
恋人とも再び接するのであるが以前のように接することが出来ない。

馬見原光毅刑事は、周りから止められつつも麻生一家事件を執念深い捜査を繰り広げる。
彼は決して被疑者死亡事件だと思っていない。
事件を追うとともに、幼児虐待で入所していた油井善博が出所、身近なところに現れたことがわかる。
油井と冬島綾女との子どもが馬見原に電話をかけて来るシーンが1番切なくて印象的だった。

今回は氷崎游子冬島綾女のプライベートや過去(特に游子の元恋人との再会シーンは印象的だ)に対して掘り下げて書かれている。
2人を対照的な人物として読まれてる読者も多いような気がする。
果たしてどちらがしあわせなのだろうか?



読者も天童氏の淡々かつ重厚な語り口に着いて行かなければならないから大変だ。

少しづつ主人公三人の接点が近くなって来た。
浚介は運び込まれた病院に亜衣事件で知り合った游子を無意識に呼ぶ。
游子は駒田が児童相談センターに子供を引き取りに来た時に暴力を受けるのだが、
過去に彼の親子問題において深く関わった馬見原が助けてくれたために大事に至らなかった。

天童荒太の描写力の確かさは人間の弱さをあぶり出すときに頂点に達する。

本作においては主要登場人物三人はもちろんのことそれ以外の人物の描写も丹念だ。
例えば、終盤のシロアリ駆除の話なんだが、この物語全体を支配している“恐怖心”の表れを読者に想起させてくれている。本当に巧妙な例えだ。とってもリアルで・・・

そして今回も衝撃のラスト・・・
なんと不登校で浚介が家庭訪問をした実森宅で事件が起こるのである。

お気づきの方も多いかなと思うが冒頭の電話相談がかなりモチーフとなっているような気がする。
第一部の冒頭は麻生一家、第二部の冒頭は実森少年かな?

その答えはもう少し待ってみようと思う。

評価は全5巻読了後  
2004年62冊目 (新作44冊目)


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