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『天窓のある家』 篠田節子 実業之日本社 - 2004年04月18日(日)

《bk1へ》
いろんな雑誌に掲載されたもので単行本化されてない作品を集めた全9篇からなる短編集であるが作品それぞれの密度はとっても濃い。

どの作品もスパイスが効いていて読者も思わず背筋を伸ばしてしまう。
篠田さんの作品って“現実的”というよりむしろ“日常的”という形容がピッタシだ。

人間の奥底に潜む真の姿を的確に読者に提供してくれる。読者が男女問わずにどの作品の主人公に対しても思わず共感してします所が凄い点である。

書かれた時期も96~02年とバラバラで悪く言うと寄せ集め的な感じも否めず正直“作品集としてのコンセプトは弱い”かもしれない。
ホラーというジャンルに分類は出来ないのであろうが、全体を通して篠田さんが筆を取るととっても文章が小気味良く感じる
多少辛辣な描写も目につくところであるが他の作家と比べて嫌味がないような気がする。
きっと的を得た女性の偽らざる心理の吐露がファンにとってはたまらないのだろう。



まず冒頭の「友と豆腐とベーゼンドルファー」が強烈である。
再就職して収入が減った夫に代わって一家を支える妻の気持ちが滲み出た秀作である。

個人的にはラストの一風風変わりな「密会」が面白かったかな。
男性の心理を意外に(?)上手く描写してる点には驚いた。

あとは表題作の「天窓のある家」も印象的だ。
女同志の友人であるがゆえの異常な関係に酔いしれることが出来る。


ひとつ残念なのは読後“希望が見えない”ところかな。
気軽に読めそうだと思われた方もちょっと面食らうかもしれない。
それだけ“人生って厳しい”ということなんでしょうか?

ただ、女性読者がエンターテイメントとして割り切って読まれたらかなり楽しめる作品である事は間違いないところだと思う。

評価7点。    
2004年38冊目 (旧作・再読作品10冊目)



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