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『三月は深き紅の淵を』(再読) 恩田陸 講談社文庫 - 2004年04月15日(木)

《bk1へ》
約3年ぶりに再読した。
恩田さんの作品って読めば読むほど味が出てくる。
本作は今となれば恩田さんの特徴が1番あらわれた作品といえるかもしれない。
とにかくこの方は本好きなのであろう。
本作を読むとそれがひしひしと伝わってくるのである。
一般的に言われている“引き出しの多さ”も彼女の本好きから生まれた所以であると体感出来る。

さて、内容的には「三月は深き紅の淵を」というタイトルの幻の本にまつわる話である。
たった1人にたった1晩だけ貸すことが許された本をめぐるさまざまなエピソード・・・
全4部からなる構成であるが、ワクワク感を持って読めるという点では本作は傑出した作品となっている。
イメージ的には“テレビドラマのオムニバス形式みたいな感じで楽しむべき作品”かもしれない。

やはり入れ子形式の作品として考えると構成力の素晴らしさが目につくのであるが、第1章〜3章までのそれぞれのストーリーも読者を釘付けにしてくれる点は忘れてはならない。
個人的にはやはり切なさが1番漂っている第3章が良かったかな。
いずれにしても、専業作家になる前に書かれた作品で作者の意欲が読者に伝わってくる点が嬉しい。


今回特に注目して読んだのは最終の第4章である。
初読の時ほど第4章に関して違和感を感じなかった。
1人称で語られてる部分があり恩田さんの“野心と本音”を垣間見ることが出来たような気がする。
ある程度恩田さんの作品を読まれた方にとってはきっと大きな収穫であろう。

第4章はまとまり感においては物足りない面も否めないが、きっと『麦の海に沈む果実』へのプロローグへと繋がる作品だと割り切って読むことが出来たからだと思う。
少しは恩田作品の知識も付いて来たかな(笑)


いずれにしても恩田さんのサービス精神満点なところがギュッと詰まった1冊だと言えそうです。
評価8点。    
2004年37冊目 (旧作・再読作品9冊目)


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