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『動物園の鳥』 坂木司 東京創元社 - 2004年04月10日(土) 《bk1へ》 『青空の卵』、『仔羊の巣』に続くひきこもり探偵シリーズの完結編である。 長編と言う事でより奥の深い内容となっている(坂木作品の特徴だと言える)のだが、前2作を読まれてない方は是非遡って読まれることをオススメします。 坂木さんの作品って他のミステリーと違って“じっくり一字一字味わって読みたい”。 よく時代小説の解説なんかに“小説のてだれ”という賛辞の言葉が使われてるが坂木さんの文章ももはや“てだれ”の領域に達しているような気がする。 特に本作はミステリー的には大した事はないのだけど(犯人はすぐにわかります)、誰もが経験する大人になるにつれ無意識的に忘れがちになる大切なことを思い起こさせてくれる点はとっても印象深い。 読んで行くうちに知らず知らずに“連帯感”が芽生えていく過程なんかは本当に読書の醍醐味かもしれませんね。 そういった意味においては《動物園》って子どものころ行った記憶と大人になって行った場合とでは同じように違った感覚だと思います。 坂木さんはラスト付近で動物園の“檻”という言葉を使って、われわれの社会をあらわしている。 ちょっとドキッとさせられた言葉なんで引用しますね。 「では、僕たちにとっての檻とはなんだろう。それは考え方の枠ではないだろうか。(中略)僕は僕自身を檻の外に出して日射しを浴びさせてやる。それは心のストレッチ。僕の飼育係は僕だけなのだから、きちんと世話をしてやらないといけない。」 本作において坂木さんは、われわれ誰もが心の奥底に持っている弱い部分の象徴としての鳥井の圧倒的な存在感を浮き彫りにすることによって、読者に“心の自立”を促すことに成功している。 あと、女性描写の上手さ(特に美月と明子)が際立っている点も付け加えておきたい。 はたして鳥井は鳥のように飛び立てるのでしょうか? 鳥井の過去や滝本の意外な一面などおなじみのオールスターキャスト総動員であなたのハートを直撃しますので心して読んでください。 心して読まれた方はきっと読後“心が浄化される”ことだと思います。 評価8点。 2004年36冊目 (新作27冊目) ...
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