『夜の果てまで』 盛田隆二 角川文庫 - 2004年03月23日(火) 《bk1へ》 小説って“感情移入”出来るか出来ないかによって感動度が違うのは自明の理である。 本作は渾身の力をふりしぼって書かれた“盛田さんの最高傑作”だと言われている。(文庫化の際に『湾岸ラプソディ』から改題) 普段、500ページを超える恋愛小説って自分の読書範囲から超越してるなあと敬遠してたものだが、あるきっかけから手に取ることとなり結果として“心が震える読書”となった。 これも“一期一会”と言えそうだ(笑) 内容的には、北大生の主人公俊介がひとまわり年上の人妻裕理子に惚れ、2人で駆け落ちしていく過程を切なく感動的に描いた恋愛小説である。 正直、恋愛小説の感想を書くのはむずかしいというか苦手だ。 本作においても、冷めた目で見れば、将来のある若い主人公が内定先などをけってまで人妻に入れ込むこと自体をを馬鹿げたことともとれるし、あるいは同情的にもとれる。 だから恋愛小説は面白いのであるが(笑)、本作は敢えて恋愛小説という狭いカテゴリーの中で捉えたくない気がする。 それだけスケールの大きな作品と言ったら良いのだろうか・・・ なぜなら、我々が普段抱いている恋愛小説のイメージとはかけ離れているというか、そう読むべき作品であるからである。 破滅的な“不倫小説”でもない。なんと言ったらいいのでしょうかね(笑)。 人生を模索している方が読まれたらきっと一筋の光を当ててくれそうな作品であると信じたい。 本作を語る上で、裕理子の息子(義理の)正太の役割は本当に重要である。 私が安心して本を閉じれたのも彼の魅力的なキャラによるものが大きいかなあと思う。 なんとか立派に成長して欲しいなあ。 あと、本作は時代背景(1990年、ちょうど湾岸戦争前後)や主人公の年代だから避けられない就職活動なども読者の年代によって懐かしく読める点も賞賛に値する。 忘れてはならないのは文庫巻末の佐藤正午さんの見事な解説である。 “失踪宣告申立書”で始まって最初ドギマギした読者が読み終えて“非の打ち所のない構成である!”と舌を巻きため息をついて本を閉じられる光景が目に浮かぶ。 人生あともどり出来ないから楽しい。 季節の移ろいとともに見事に語られた本作は、精一杯生きた男と女の“愛の証”である。 2人の“愛の証”は明日からの読者の人生を奮い立たせてくれる。 本作は単なる恋愛小説ではない。 恋愛だけでなく人生の“指南書”と言えそうです。 欲張りな本好きの方に特にオススメしたいですね(笑) 評価9点。オススメ作品 2004年30冊目 (旧作・再読作品7冊目) ...
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