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『誰か』 宮部みゆき 実業之日本社 - 2004年01月28日(水)

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帯に“事件は小さいけれど、悩みは深い。”とある。読者にとっては“宮部さんだから作品評価をするにあたって悩みはきっと深い”のであろう。

久々の現代物で期待して読んだのですが、残念ながら決して読後感のいい作品ではなかった。
やはり、かなりの社会派作品でなければ時代小説の方が、今の彼女には合っているのだろうか?
どうしても“ありきたり”というレベルの作品で落ち着きそうですね本作は・・・

最近読んだ羽田圭介さんの『黒冷水』は男性兄弟の確執を描いていたが、本作は逆バージョンである。
ただ大人の女性同志なので(年齢が高い)、あんまり共感出来なかったのも確かかな。

女性読者が読まれたら宮部さんの『夢にも思わない』と同じようなタイプの教訓を与えられるのかもしれません。

主人公の“逆玉”の三郎が初めは少し情けないような気もしたが、菜穂子と知り合ったいきさつなんかを知るにつれて、意志の強さが感じられた点は評価したく思う。
あと、愛娘の桃子ちゃんが癒してくれる存在だったのは助かった気がした。

ラストあたりの展開はちょっと意外で面白いと言えば面白いのだが、心暖まるものが少なかったような気がする。
でも人間の心情は描き切ってる点も見逃せないかな。

作品全体としては適度なユーモアをまじえた、読みやすい文章は過去のどの宮部作品と比べても負けないであろう。
特に美空ひばりや“金妻”の歌などはとっても印象深い。

事件は小さいが、加害者側の気持ちもまじえて描いてる点はさすがである。



ここからが本音です(笑)
ちょっと姉の聡美が気の毒すぎてスッキリとした気分で本を閉じれなかったのが残念だ。

彼女は裏の主人公とも言えそうで、きっと三郎より彼女の方の印象度の方が強いであろう点は、どうしてもこの作品をいつもの宮部さんの“ハートウォーミング溢れる作風”からかけ離している証拠ともなっている。

でもそれがきっと宮部さんの読者にわかって欲しい“良識”なんでしょう。
そういう点では“女性読者向けの作品”とも言えそうです。
“男性選びは慎重に!”ということでしょうか?(笑)

評価7点。    
2004年冊目 (新作7冊目)


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