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『接近』 古処誠二 新潮社 - 2004年01月24日(土)

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『ルール』、『分岐点』に引き続き戦争をテーマとしたズシリと心に響く作品を今回も提供してくれている。

今回の舞台は太平洋戦争の末期の米軍上陸後の沖縄。自衛隊出身の著者とはいえ、戦後生まれの古処さんが3作続けて戦争のテーマを書くというのは並々ならぬ意欲と熱き想いが伝わってくる。

主人公は11才の少年弥一。前作『分岐点』に引き続き、日本が敗戦に追い込まれていく過程を少年の目を通すことによって、皇国の勝利を信じつつも見も心もズタズタに陥って行く日本人の過程を悲劇的に綴っている。

疎開せずに軍を助けるために手伝いをしている少年の純真な気持ちの変貌が見事に描かれている。
やはり地上戦を国内で唯一味わった沖縄ならではの舞台作りである。

構成的に今回は“メフィスト賞出身作家”の片鱗も見せている。
冒頭に日系2世のサカノが登場し、読み進めていくうちに誰がスパイであるのかミステリータッチで興味深く読める。
題材から想像される一般的な“読みづらい”というイメージはない。
あと、やはり“日系人”に生まれた故に苦しい使命を負わされた人々の胸の内も理解できた。


現実はもっと厳しかったのだろうと言う事を知らしめてくれただけでこの本を読んだ価値があるのだと思う。
登場人物全員誰も責められない。皆が“火の車”状態であったからだ。

彼らの国への“献身”のおかげで現在の私たちがいることを忘れてはならない。

少しは私たちも“愛国心”を持ちたいものである。

評価8点。    
2004年冊目 (新作5冊目)


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