『逃避行』 篠田節子 光文社 - 2004年01月23日(金) 《bk1へ》 《Amazonへ》 篠田さんの長編を久々に読んだが、正直“少し枚数が足りなかった”ような気がする。 展開がテンポ良くというより急過ぎるために、彼女の得意なじっくり読ませる部分が欠けてたのかもしれません。 題材的にはペット(特に犬)を飼ってるか否かによって、共感度が全然違うはずです。 私自身、ペットを飼ってないので物語にあんまり入り込めず、どうしても冒頭の事件の被害者の方に終始同情してしまったのが残念だった。 主人公の妙子はずっと専業主婦として結婚以来頑張ってきたのだが、更年期を迎えて手術に踏み切る。 どちらかと言えば、夫や娘たちからも冷たくされている。 事件のあとも保健所に預けた方がいいという夫や娘たち・・・ そう言った彼女の環境自体も、愛犬ゴールデンレトリバーの“ポポ”に特別に愛着を感じ“逃避行”を開始する強いモチーフとなってる点も見逃せない。 やはり本作に描かれてる特有の孤独感や寂寥感は女性読者の方が理解しやすいのかもしれません。 そのあたりは女性週刊誌に連載されたものを単行本化された点でも覗えるのだが、篠田さん自身、女性の“保身”について強く問題提議したくて執筆されたのであろう点に留意して読めた読者はおのずと評価が高くなる作品だと思う。 ただ、後半に出てくるんだけど“老年期における田舎ぐらし”についてや物語全体を支配している“マスコミの事件報道のあり方”に対して問題点を投げかけてくれてる点はいい勉強となった。 ラストのまとめ方なんかはさすがだとは思うが、個人的にはもっとスケールの大きな社会派作品を期待したく思う。 評価7点。 2004年6冊目 (新作4冊目) ...
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