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『パレード』 吉田修一 幻冬舎 - 2004年01月21日(水)

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吉田修一の作品にはある種独特の“若者の息づかい”が聞こえる。
もはや現代に生きる“若者の代弁者”と言っても過言じゃない。

同じ読者と距離感の近さを持ち味とする作家の石田衣良ほどお洒落ではないが、内面に潜む本音をあぶり出している。
最新作『東京湾景』で恋愛小説という新境地を開いた吉田さんの出世作とも呼べる作品である本作は、山本周五郎賞を受賞された事で記憶に新しい。
内容的には先の見えない青春真っ只中の5人の男女の同居生活を描いた作品である。
5章から構成されていて、1章ごとに登場人物が主役を演じ、いろんな関係を読者に披露しながら展開して行く。
ただ、単なる爽やかな青春物語じゃない

他のどの吉田作品よりも“本作は奥が深い”のである。
性別問わず5人の男女それぞれに共感出来る点は特筆すべき点である。
やはり読者が読んでいて情景が本当にリアルに目に浮かぶ点は吉田さんの力量の確かさだと言えよう。
特にセリフのビビッドさにはいつもながら舌を巻く。

誰もが持っている孤独感・閉塞感・空虚感を見事にラストで具現化されている。
ただ、このラストは読み手によっては不満かもしれない。
きっと評価が分かれるであろう。
率直な読後感としては“怖い”という言葉を敢えて使いたい。それは“現実の厳しさ”を投げかけてくれてる他ならない。
不満がある方はやはり吉田さんの小説は合わないのかもしれない。

5人の男女それぞれの距離感に共感できたあなたは、もはや吉田作品の“虜”である。

評価8点。    
2004年冊目 (旧作・再読作品2冊目)


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