『池袋ウエストゲートパーク』(再読) 石田衣良 文春文庫 - 2003年12月10日(水) とってもテンポが良く躍動感のある小説だ。 東京の風俗をギュッと圧縮した構成で楽しませてくれる。 《bk1へ》 《Amazonへ》 日頃、風俗的な題材を書かせたら、石田さんか吉田修一さんが双璧だと思うのだが、物語の軽快な運びは石田さんの方に軍配があがる。 池袋にて家業の果物屋の手伝いをしている主人公マコトが一人称で語り、テンポよく展開して行く様は見事の一語に尽きる。 マコトはまるで若者の“代弁者”だ。 彼がナイスガイであるがゆえに、年齢が高い読者が読んでも青春の良さをしみじみと思い知らせてくれる。 例えサラリーマンが読んでもネクタイを外してリラックスして読める一冊なのには間違いないところ。 全4篇からなる連作短編集だが、ヤクザの孫娘を探す「エキサイタブルボーイ」が一番良かったかな。 最後のあたりは胸が締めつけられる。 サルが2巻目以降も活躍するみたいなので楽しみだ。 あと、印象的なのはラストの「サンシャイン通り内線」での加奈とのほろずっぱい恋愛が印象的だった。 少しミステリー的には弱い面も否めないが、暗いテーマでありながら(援助交際・殺人事件・不法就労など)、生き生きとした文章で見事にカバーリング、一読の価値があると信じてやまない。 個人的には直木賞を受賞した『4TEEN』のような瑞々しさはないが、伸び伸びとした筆で書かれた内容は石田さんの代表作と呼ぶにふさわしいような気がする。 マコトの“友情を大切にする気性”が物語をより厚みのあるものにしているに違いない。 読み終えた後、青春時代の友達を思い起こさせてくれただけでも本書を読んで良かったと素直に思うし、石田さんにも感謝をしたい。 若い方にとったらリアルに感じるに違いない。 バイブル的な作品と言えそうだ。 きっと若者の活字離れに歯止めをかけるのには恰好の一冊なんだと思う。 シリーズ最新刊(第4巻)が出たばかり、2巻目以降マコトがいかに成長して行くかが読書の楽しみを倍増させてくれそうですね。 評価8点 ...
|
|