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『東京湾景』 吉田修一 新潮社 - 2003年10月31日(金)

新しい“恋愛小説のスタンダード的作品”の誕生だと思う。
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吉田さんの小説の特徴は“平凡で不器用に生きる主人公”に対する共感に尽きると思ってますが、『日曜日たち』よりさらに恋愛と言うステージにあげることによってより持ち味を発揮していると言えそうな作品です。

出会い系サイトを利用して知り合った亮介と涼子。
働く場所も品川の倉庫とお台場の高層ビルと近くであっても対照的。
このコントラストが物語り全体を支配している。
東京の地理に関しては詳しくないのですが(苦笑)、詳しい方が読まれたらもっと実感できそうな作品だと言えそうですね。

どちらかと言えば涼子が主人公と言った方がベターかもしれない。
それだけ、心の動きを明確に捉えて描写している点は見逃せない。
吉田さんの凄い点は男の気持ちも女の気持ちもフィフティ・フィフティに理解してる点であろう。
なかなか出来そうで出来ないけど本書では成功してるように感じる。

知り合った経緯や、過去のトラウマ、三角関係などいろんな悩みを通じて考え成長して行く過程は見事であるが、果たして結末はどうなったのでしょうか?

普段、恋愛小説はという方にもスンナリと受け入れられそうなストーリー展開の作品と言えそうです。
恋愛をきれいごとで済ませてないけれど、決して一番大事な部分は忘れてはならないという吉田さんの主張は支持するに値すると思う。

一見、誰にでも書けそうな文章の中にプロの凄さを見出した1冊と言えそうです。

評価9点。オススメ


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