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『殺人の門』 東野圭吾 角川書店 - 2003年09月18日(木)

2段組で440ページ余りあり期待して読みました。
裕福な家に生まれた田島和幸の翻弄される人生を描いている。
途中、何度も何度も殺意を抱くのだが・・・

内容的は同じ失敗の繰り返しばかりで“間延び感”が否めなかった気がする。
ちょっと雑誌連載の弊害が出てるのかもしれませんね。

東野さんの“人間の奥底に潜む悪意を描く巧さ”は定評があるが、本作は『手紙』のように受身的なものじゃなく、主人公さえしっかりしてたら苦しまなくてよかったのにという気持ちが読者側にも強く持てるためにかなり感動度が落ちるような気がする。

個人的には、東野作品の魅力って“誰よりも読みやすい文章”“卓越した物語作りの上手さ”だと思ってます。
読者も他の作家よりもずっと物語に読者を没頭させてくれる期待感を持って読まれる場合が多いと思う。

そのために主人公に対する共感が思い入れするに対して必要不可欠なものだと思えるのだが、本作に関しては“同情を通り越して情けない気分にさせられ”た感は否めない(苦笑)

われわれファンが東野さんに期待しているものはもっと大きい。

私は主人公を不幸だとは思いませんでした。彼は“優柔不断な人間の代名詞”のような気がする。
男の人生って自分でもっと切り開いて行けるんじゃないだろうかと思うことしきり・・・

逆にいい点も述べますね(笑)
まず、ラストの倉持の動機を語るところは東野さんのいちばん得意とする部分だと思う。
人間の複雑な心理を巧く短く描写してますね。
あと、さりげない文章で悪徳商法なんかを読者の前に提供してくれる点は個人的に面白かったと思う。
陰の主人公である倉持修の心の動きが謎めいているようで良くわかるように書かれている点もさすがだと思う。
倉持を主人公とした方が割り切って読めて面白かったかもしれませんね。

正直、重松さんの『疾走』のような衝撃作ともいいがたいと思います。
『疾走』は物語全体が重くて暗いが、本作は暗いのは主人公だけでしょう、きっと・・・

それでも本作の方がずっと読みやすい。
読んでて辛くなる本でもない。どちらかと言えばイライラする本かな。
ファンも複雑なのですが(笑)そんなに面白くないのにスイスイ読ませてくれるのも東野さんの筆力の高さなのかもしれませんね。

結論として、ちょっと人間のいやな部分(悪意)を読みすぎた気がします(笑)
『白夜行』と似た感じの作品であるが、『白夜行』の素晴らしさを際立たせる結果となった作品のような気がする。

大きな違いは主人公に共感出来るか否かがポイントでしょう。
私は主人公に最後まで共感できませんでした。

評価7点。


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