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『いま、会いにゆきます』 市川拓司 小学館 - 2003年07月14日(月)

懐が深くて胸が詰まる小説だ。
恋愛小説特有の“あざとさ”が感じられない点に市川さんの筆力の高さが窺い知れる。
まさに読者を選ばない恋愛小説って感じかな。
どちらかといえば既婚者向けだと思うが、2人の馴れ初め等も上手く描写してるので恋愛小説としても家族小説としても読ませてくれる稀有な作品だ。
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使い古された言葉かもしれないが、子どもは夫婦の“愛の結晶”。
仲のいいふたりのあいだに出来た子どもはたとえ両親と離れ離れになってもしあわせだ。
きっとどこに行っても(たとえアーカイブ星に行っても)別れずに心はひとつである。

親子3人(巧と澪と佑司)が自分を犠牲にしてまでも相手が幸福になった欲しいと言う気持ちが滲み出ている。
現実では考えられないかもしれないが、ちょっとこういった夢見心地にさせてくれるのが恋愛小説の醍醐味を堪能できた気がする。

なにわともあれ、主人公の巧がとっても良い。
仕事が出来るとか云々じゃなくって、このようにして女性や子どもを愛するんだよって読者に見本を示してくれる。
そこには究極のいたわりの気持ちがあって、読者に日常生活において“少し君も反省しろよ!”って感じさせてくれるからたいしたものだ。

敢えて物語のストーリーには触れたくない。
読めばわかるし、読んでみなければわからないからだ。

会話文が多いので、ちょっと疲れてる時に読めば効果満点かもしれない。
読んだあと、ちょっと自分が優しい気持ちになれた気がするのは気のせいだろうか。
ちょうど、“雨の多い季節”にこの作品に出会えたことを誇りに思いたい。
あなたも心のリハビリをして下さいね。

評価9点。オススメ


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