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『其の一日』 諸田玲子 講談社 - 2003年06月30日(月)

4編からなる短篇集で吉川英治新人文学賞受賞作品です。

諸田さん著作リスト《こちら》

運命に翻弄されながらも一生懸命に生きる主人公たちを活写している。
どの話も緊迫感があって読ませてくれる。難を言えばちょっと地味すぎるかなと言う点か・・・

全体として、他の諸田さんの作品よりも心理描写が凄いなあと思いました。
そのへんは短篇集であるがゆえにより研ぎ澄まされた文章となってるような気がする。

桜田門外の変、箕輪心中など史実に基づいた篇もある(全部かもしれませんが?)ので興味深く読める。
特に、女性主人公の2篇がとってもとが印象的。

夫の自害の原因を調べて行く内に凄い事実に辿り着く過程を見事に描いた「蛙」
20年以上思い続けてきた男(井伊直弼)の安否を気遣う女の心情が滲み出た「釜中の魚」
やはり女性の情感を描写するのは際立っている。

他の2篇も葛藤しながらもそれぞれの主人公の気持ちを深く入り込んで描写してる。
まるで読者に他人に対する思い入れというものを考え直しなさいと教えてくれているような気分にさせられる。

地味だけど安心して読める1冊だといえそうです。
読んだ次の日から少しは懸命に生きようと努力してるような気がしますが・・・(笑)

評価8点。


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