流れる水の中に...雨音

 

 

ふたたび。 - 2006年02月23日(木)



何年ぶりだっただろうか。
彼の姿を遠くにみつけたとき 懐かしさよりも親しみに近い感情が溢れた。
時の経過に反して 彼は全く変わって無くて どこかちょっと拍子抜けした。
イタリア製のスーツにフランス製のシャツとネクタイ、イギリス製の靴。
それでいて 嫌味でないのは人懐っこい笑顔の所為だろう。彼は屈託なく笑っていた。

席に通され 話を始める。だけど 不思議と話す事柄が見つからない。
とても懐かしかったから 沢山はなすべき事柄があると思っていたけれど 意外に何も伝えたいことが無いと気づいて はじめて理解した。

「別れた男から得るものはない」と誰かがいってたけど 本当にその通りだ。伝えたい事もなければ、聞きたい事も特にない。
そんな思いを持て余しながら 時間を過ごしていた。

話の途中 ときおり彼の顔を眺めると 彼はまるで 何かを慈しむような、懐かしむような、そんな目で私をじっとみていたから 少し気になっていたけれど その答えを今朝のメールに発見した。

「それにしても 凄く幸せそうだったね」


ずっと 彼の事が気掛かりだった。心の何処かで 申し訳ないと ずっと思っていたから。だけどどうやら順調そうで 正直 肩の荷が下りた。
それを見届けられたから それだけでも会えてよかった。


別れ際 春に東京に来る時は連絡してくれと言われたけれど 多分 私からは連絡はしないだろう。
曖昧にうなずいたけど 今朝のメールの返信に「さよなら」のかわりに 「お仕事頑張ってね」と そう書いて送っておいた。






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