Kyoto Sanga Sketch Book
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2007年04月19日(木) |
【草津戦第9節】〜子供達の英雄の15分間(鴨池戦) |
Jリーグ観戦に慣れていない鹿児島の大人の観客は、 ゴールに迫る簡単なプレーだけで無邪気な歓声が上がる。 小さな少年達は、京都サンガ!と幼い声を響かせる。
3連勝中のサンガ。 後半残り15分。やっと京都の時間になっていた。
徳重が右からコーナーキック。敵の作った壁に跳ね返ったボール。 また彼がゴールに向かって蹴りこんだ。 DFの跳ね返したボールを誰かが拾ったのが見え、 次の瞬間、低い弾丸のようなシュートがゴールに吸い込まれた。
その時、スタンド席まで総立ちになった! 男性や女性の感極まった歓声。
メイン席の大歓声は鎮まらず。 ゴール裏から、京都サポーターのルンバサンバの美しい合唱が陶酔して被さる。 それにバック席から幼い子供達のキョートサンガ!の大合唱が混じる。 ゴール裏からのリズムと子供たちの高音の合唱が絡まり広がっていく。 どこのスタジアムにもない、奇妙な一体感。
その直後、「ただ今のゴールは、中山博貴!」とアナウンスが流れた。
そうしたらスタンド席はもう一度、大変なことに。 じっとしていれなくなった男性が立ち上がってタオルマフラーを振り回し出した。
博貴が英雄になった瞬間。
この時は、ロスタイムで起きることなど考えもしなかった。
距離を置けば別のものが見える、と言われた。 でも本当にこの地で何か困惑してます。 ここはサッカー所。高校男子も女子も、中学男子まで全国制覇したのは2年前。 でも、ここにいると本当に…
Jリーグが遠いんです。。
例えば、九州を南下しているとき、 田舎の駅で鹿児島市のある祭りに向かう十代の少年がいました。 あるJリーグのユニを着ていた。 聞くと今日は大事な試合なので、自分もユニを着ているのだと。
しかし、彼はそのクラブのリーグ戦を見たことがないという。 ゴール裏で応援するのに何か登録か入会が必要だと思ってるらしい。 私がそのクラブのホームスタジアムの話をすると目を輝かせる。 …Jのファンも海外クラブをみている感覚に近いのかもしれない。
なのに…練習や試合に慌ててタクシーで駆けつける私らサポーターに、 「選手のご家族ですか?」「ご親戚でも?」「○○の卒業生?」 身内のように応援するのは、やっぱり「身内」なんだろう、という考え。 (まあ、実際はここにも色んなタイプのサッカーファンやサポーターがいますが…)
比較的プロ選手の存在は遠くない、でもJリーグクラブは遠い。変なところ。
で、本日。 試合の前座は京都サンガの5選手が所属していた少年サッカーの対抗戦。 目につくのは群雄割拠時代に突入した鹿児島の、有名サッカー高校の生徒たち。 (例えばチケットもぎりをしているのは、坊主頭の鹿実生、吹奏楽団は神村学園高校、 テントの中で希望者にフェイスペインティングを施しているのは、可愛い城西高校の女子高生。もちろんスタンドにはサッカー部員。)
今日のお祭り。数少ない彼らとJリーグの接点を与える時間。 ここにいるJリーガー、そして未来のJリーガー達の為の試合。
■前半
中二日の3連戦の選手たちには疲れがある。 ピッチに大きく散らばり、 選手間の距離が広すぎる。DFラインもかなり低い。
その中で地元出身の徳重が献身的に動いていた。 子供達の声援に低い位置から、逆サイドを攻めあがる角田にロングパス。 そして左サイドの低い位置から駆け上がりワンツーを狙ったり。 コーナーキック、そして審判への抗議まで(笑)
しかし、京都は概して草津のダイレクトな長短のパスの後を追うだけ。
草津は簡単に中盤でボールを奪い、サイドを突破しようとする。 ただ、草津のサイド突破は平島が難なく止めてしまう。 ポゼッションは相手が上だが、あまり草津はシュートまで持ち込まず。
それほどの脅威は感じないけど。 京都の攻撃はそれ以上に物足りない。
あまりの退屈さに、 私の斜め前にはアクビをする男性も。。
■後半
DF秋田から前線の選手まで長いボールが出る。 右から上がる徳重が前線から受け、パウリーニョへ。 しかしパウのシュートは大きくポストを超える。 それでも秋田が再三、ロングパスを前線に送っていた。
だんだんとお互いのDFラインが上がりコンパクト気味になっていく。
15分。中山が小原に代えて投入された。24分、大剛も中払に代えてイン。
「中山博貴!」 この交代に凄い拍手がスタジアムを包んで。鴨池スタジアムが目を覚ましたよう。 (これじゃ地元選手が鴨池で試合をしたいというのが良くわかる。。)
中山が中央で流れて、中盤からのパスを受ける。 サイドからのボールも拾う。 前線に位置するようになった徳重も、 ボールを受けて起点となり、中山に渡す。 それに大剛が絡む。
子供達の徳重や中山への声援が大きくなる。
中盤からのボールを又右に走る徳重が受け、中央のパウへ。 シュートは左へそれたけど。 サイドバックの選手もガンガン前に上がってきて攻撃にやっと厚みが。
そしてついに、徳重の右からのシュート!相手DFに当たった。 それを中山が拾う。低い強いシュート。 弾丸のようなボールがゴールに高速で突き刺さる。
「ゴール!!!」
こうして、メイン席の総立ちのごった返した騒ぎが始まった。
ここで試合は終わってしまえばよかった。
ロスタイム。 まだ京都の選手達は、ヒーローとなった中山博貴はチャンスを狙っていた。 低い位置で石井からボールを受け渡した中山は、またゴールへと走っていく。 徳重へのボールは、自分に返してもらう為。
しかし徳重はボールを失い、草津の長いボールが出た。 ジャンプする秋田、しかし目測を誤った。 頭上を越えるボール。走る松浦に渡る。 慌てて追うチアゴをかわし、続けて平島をかわし、ボールはゴールへと。
草津のゴール。 静まり返った鴨池。その後すぐ、試合は終わった。
博貴は何をやってたんだろう。 あの子供達の声が前に向かわせてしまったんだろうか。 世代別代表への焦り?
何の声もしない鴨池。
京都1−1草津
鴨池で勝ったのはもう6年前。 多分この地、今日応援していた少年たちはサンガが勝った所を見たことないはず。
スタンドを出て、京都やこちら在住の各スタンドにいたサポの友人に会う。
ゴール裏からの一団。その中に二日前に出会ったばかりの鹿児島の青年も。 前々日の鴨池で、ひっそりサンガの練習を見ていた彼。 あまりのサンガへの詳しさに、ファンぶりに、 スタンディング応援は誰でもできるよ、と伝えると喜んでくれました。
また一人サンガサポが増えました。 でも責任は…私は負えるのかと。
本来、ホーム戦はその地のクラブがその地でするべきものだから。 複雑な、切ない気持ちで毎回地方開催は終わる。 地方開催は消えていくべき、いや多分近いうちに消えてしまうだろう。
今日の試合前のイベントに紛れてひっそり、 Jリーグ、そしてなでしこリーグを目指す二つの男女の地元クラブの、 ペイントバスの始発式がありました。 ここにも大切なものがあるはず。地元の自覚は微妙だけど…ね。
Jリーグが日常でないサッカー少年の溢れた土地の、夢か幻のような一夜。 次回の鴨池戦は9月の水戸戦。もう発表になってます。
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