Kyoto Sanga Sketch Book
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2005年03月04日(金) 【仙台戦第43節】〜巨大な鳳凰の旗の下で(遅すぎた完成)


現在の京都の順位は5位。最近勝ち続けているとは言え、
大宮は京都に負けて以来13連勝、
福岡も京都に負けてから勝ち点3と取り続けていました。
しかし勝ち続けていれば、そしてライバルの山形と福岡が今日勝てなかったら、
昇格の望みは最終節まで持ち越せる。



京都の僅かに冷たく緊張始めた秋の大気。

久々の西京極。芝の上には巨大な布が敷かれていた。
落ち着いた紫と黒に分割され、巨大な二羽の鳳凰が向かい合わせに黄色に抜かれて描かれている。
それは、静かにピッチ上のスタッフの手によって運ばれ、柵を越えてゴール裏に手渡された。

生まれたばかりの京都のビッグフラッグがウネウネとサポーターの頭の上を登っていく。
大勢の人の手に渡されていくうちに、どんどん大きな生き物のように魂が入り、一杯に広がった。
その瞬間息を飲んだ。こんなに大きいものだったとは。

渋くて、美しくて。ああ結構良いもんなんだな、ビッグフラッグ。
モノって結構大事かも。裸の心だけじゃ何かにこう的を絞れないというか。
ただの布が気持ちをもって、人の心をやんわりまとめる。


そんな美しい生まれたばかりのフラッグを見て心から嬉しい。ただ…
今、やっとチームは完成しつつある。
悲しいことに、鹿島を蹴ってまで残留させた黒部はベンチに、
J1と争奪戦を繰り広げた萩村、そして、
五輪選出の野心を抱いて来た原竜太はスタンドにいたはず。
いつものスタメンではずれていた熱田は急性胃腸炎。




KYOTO SANGA!! KYOTO SANGA!!
コールにかぶせる形で試合が始まった。

ただここにあるのは現在(いま)だけ。
過去の栄光の甘い記憶も、これから来る未来への不安もここにあってはいけない。



■前半■

序盤は仙台優勢。
しかし、次第に京都のボールを持つ時間が長くなる。
ずっと長い間出番のなかったボランチ斉藤の腕に巻かれた黄色いキャプテンマークが、
随所で光る。

10分頃、斉藤が豪快にミドルシュート。
その頃から京都がリズムを掴む。

彼が美尾の後ろに、中払の前に、そして信じられないぐらい下がるチェと入れ違う。
斉藤が各所に出没して起点に。空間を割るような大きなサイドチェンジも。
石丸が底で無難に散らし続ける。二人の復活で、2年前の中盤が戻ったよう。

チェはほとんど前を向くことなく、
ひたすら相手を背負い、ポストプレーに徹する。
斉藤の起用で守備的な位置から解放された中払が、
1,5列目から何度も相手DFをすり抜けていった。

つまり、ピッチを走る白いボールは開幕から7ヶ月を経て、やっと縦横無尽に走り出した。
つまり、シーズンが終わるたった1ヶ月前から。

遅すぎ。今年もだ。

確かに、仙台の寿人は再三いい動き出しを見せていた。
正直、流石にこの数試合の相手と仙台は違う。寄せが動き出しが全然違う。
しかし京都のサイド攻撃と仙台自身の前線での意思不統一(?)で、
攻撃は単調なロングボールだけ。随所に間延びしたおかしな空間が生まれていた。
(ベルデニック監督去就の報道が影響を与えていたかもしれない)

そう言えばこの最近の4試合、相手のキーマンが全く消えていた。
甲府の小倉、鳥栖の小石、今日のシルビーニョ。
これがJ2に顕著と言われる「相手を消す」サッカーの表れなのかな(やっとかい…)。


仙台の黒に黄色のラインのジャージ姿、名将と言われたベルデニック監督が通訳と共に、
ラインのところまで来て選手達に指示を与え続けていた。

縦に石丸からのDFの裏をつく抜けるボール。
仙台の高い3バックの裏を狙う京都。
少しずつ仙台の選手たちも上がってくる。手島が一人残ってクリア。

三上のオーバーラップ、後ろで斉藤かが大きく右にサイドチェンジ。
返されたボールと落ち着いて中央でキープ、
そして右へ。ゆったりと京都ばボールを回しだす。次は誰がどう飛び出すか?

今日の京都は誰もが果敢。誰がどんな役割ということを感じさせない。
多少走りすぎというか、コンビネーションがずれてる感はあるけど(笑)。
ミスもあるんだが、こりゃマークをつけにくそう。。

最初の得点は相手のミスから。不用意なバックパスを奪った選手がいた。
GKと対面してそのまま当然のようにゴールに流し込んだ。チェのシュートだった。

前半38分。京都1−0仙台

中払のミドル。速い攻めが続く。
チェがインターセプト、ラインピッチ中央で守備をするチェ、
そして素早く奪ったボールを、
大きく空いたスペースにいる中央の美尾に…

一方的な京都の時間。フィニッシュの荒さが気がかりだが。
今日も勝てる、この1ヶ月は違う、そんな空気が流れた。

ほっとすると、ライバルの福岡、山形と戦っている鳥栖と水戸が気がかりに。
福岡か山形が勝ってしまえば、京都の昇格の可能性は0になる。
「ベンチで遊んでいる黒部と田原を、
今日だけでもライバルと戦っている2チームに貸したい」と
胃が痛くなるほど切実に思った。DFの萩村も。惜しい人材が余ってる。なんでだろう。
そう思うのもおごりなんだろうか。



■後半■

仙台が二人交代。京都の分厚い守備を崩そうと、4人のFW登録を投入。
美尾と三上の連携失敗。仙台の逆襲!

しかし、京都の守備が待ち構えた。
仙台の攻撃を京都の二列になった守備が大きく包み込む。
フラットになり、両翼が上がったりの4バック。

右に流れていた斉藤が逆サイドで駆け上がった中払に大きく球を送る。
ロングパスが大きく伸びる。
両足を広げたまま小柄な中払が宙に浮き、
彼の頭が勢いよくボールをゴールの中に打ちこんだ。

後半3分。京都2−0仙台。




中盤に下がったチェからサイドチェンジ。
右のダイゴに、中央の中払に。
ボールが動き、人が動き、常に京都の為にだけスペースがあく。
あんなに苦しめられた西京極のピッチの上の空間が、京都に味方する。

後ろから縦に相手選手たちの間を長く勢い良く走るボール。
人もよく動き、スルーパスがよく繋がる。
ダイゴから一人でドリブルで走る、シュートはできずとも、
まだボールは京都に返される。
もう、個々人の小さな技に頼らなくていい。

これだけノリノリになると、スタンドも盛り上がる。
相手GKへのバックパスにも大胆に意地悪にブーイングが沸く。


余裕がでてきたこの時知った。
他会場では下位の水戸と鳥栖が、うちのライバルの山形福岡とまだ競合っていた。
二チームとも引き分けに持ち込める力は十分にあるはず。それならば…



しかし、悟のボールを奪った大芝から右の万代へ、やばい!手島が守る。
仙台もカードを切って来る。
逃げ切りを図りだした受けに回った京都にとって、
今日も佐藤寿人の動きは怖かった。

悲鳴が続く。GK平井のファインセーブが続いている。
ホーム側から遠い平井の守るゴール前のせめぎ合いは、私達には良くわからない。
ただひたすら、平井の名前がコールされていたた。

また、素早く仙台にカットされた京都ボールが京都のゴール向かう。
一番の危機が訪れた。京都のゴール前で込み合う大勢の選手たち。
こぼれたボールをもう一度蹴る仙台。やばい。ゴールに当ってわずかに跳ね返る。
それを石丸が必死に足にあて、ダイゴがクリアした。
顔を覆う仙台選手。

今度は仙台の長身選手のヘディングを平井が死守。
もう一度ある!ゴールのバーすれすれに襲う球に平井が触る。
仙台の時間が続く。

運動量の落ちていたダイゴに変えて冨田が入った。

次は京都の時間、セカンドボールは全部京都。
手島、悟だけを残して、全員で攻めに上がる京都。
美尾からフリーのチェへ。なのに…チェがシュートミス。地面で頭をかかえた。
フリーで独走した美尾、チェのシュート、こぼれた球を中山が相手DFと球を奪い合う。
右サイドを駆け上がる斉藤、美尾がまた中央でフリーで受ける。
(実はこの試合に関しては、決定力があれば大量得点になったかもしれない)

しかし、仙台も前半と違い、ボールのおさまり所ができている。
右から関口のクロス、寿人がそのクロスを加速させるように頭を合わせる。
後半40分。ついに仙台寿人がゴール。
京都2−1仙台。

もうこうなると、他会場の結果なんてどうでもよくなった。
サポーターの本能ってやつか。勝て。この試合を絶対に。


斉藤からの回り込みながらのシュートは枠に入る。
相手GKが踊るように手を上げた。
もう一度チェがいくか?

しかしここからは仙台のパワープレー。残り数分でも恐ろしかった。
前線でスピードをもって攻めるFWを京都は人数をかけて囲み、
パスの出所さえ潰したつもりだった。
しかし彼は自分で京都ゴールに向かって勢いよく蹴った!

あのチェが前線から守備をしている。






後半44分。チェが降りる。
そこで交代に呼ばれたのは、たぶん多くのサポーターが思っていた選手ではなかった。

黒部でなく田原が呼ばれた。

その瞬間、スタンドが僅かにシーンとなったように感じた。



ロスタイム突入。京都1点リード。
京都の選手が仙台のゴールに向かうだけで歓声が上がる。
勝利を迎える京都祭りが歌われだした直後に笛が吹かれた。

試合終了。京都2−1仙台で勝利。
勝った。









チームがやっと完成した。昇格の望みが消えてしまうかもしれない日に。
携帯で他会場の結果を見るのは怖かった。見れなかった。
ただ目の前の勝利だけを喜んでいる人たちを眺めていた。

他チームの結果は携帯で簡単に知れる。
しかし観客はその話をしない。私も他試合の結果を知るのが怖くて。
前半だけなら、水戸と鳥栖が頑張ってくれてたはず。
ひょっとして…。まだ私たちは"終わって"ないのでは?


結果を見るかどうか躊躇しているうちに、ホーム最終戦のセレモニーが始まる。
夏から指揮をとり始めた柱谷幸一監督がマイクの前に立った。
「残念ながら昇格は果たせませんでしたが、来年は選手たちと昇格します。」
その時初めて、J1復帰が夢と消えたことを知った。
(鳥栖が福岡に負けていた)
解説者の時とは違いほんの少しだけ活舌の悪い、まだ選手のような若々しい声が響く。


悲しいというより、なんかスーッと力が抜ける。
何度も諦めたし、今日だってそれ程期待していた訳ではないけど…。

落ち込んでいるという訳でない。ただ活力を失ったなんとも言えない空気の中で、
選手たちが一周する。
心なしか、プレゼントボールの投げ込みもいい加減。
微妙なうだうだな雰囲気。。なんだ、皆実は期待してたのか(笑)。






選手たちがいなくなったピッチ。
サポーターたちがまるで何事もなかったかのように、
いつもの勝ち試合のようにゴール裏を左右に走り出す。
三年前、私達が大宮スタの石畳の上で走ったように。

第43節仙台戦 出場選手 
平井 鈴木和 手島 鈴木悟 三上 石丸 斉藤 
渡邉 美尾 中払 崔龍洙 (サブ 冨田 中山 田原)


        チェ
      中払
   美尾       渡邉
      石丸 斉藤
  三上 鈴木悟 手島 鈴木和

        平井


※結局はこの次の最終節大宮戦は勝てなかった。連勝は止まった。
上の試合のMOM斉藤を欠いていた為、と。

今シーズンの不調を、「実は別のところにあるんですけどね…」と
インタビューでこぼした夏からの監督の言いたかったことは、
内部分裂(京都新聞でも普通にさらって書かれていた)か、と思ってたんですが、
大きいのは「フィジカル作りの失敗」と捕らえているむきが。
どうも、この時期勝てるようになるのは「予想通り」だったよう。。
それって特に斉藤が出遅れた原因だったんでしょうかね…他選手もそうなんでしょうが。

結局上のメンバーはチェ以外残留しました。
新しい選手を加えて層が厚くして、もう一度出直しです。


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