HIS AND HER LOG

2006年11月19日(日) 憐れ、彼女は娼婦

思えば、最初から最後まで血にまみれた女だった、とリボーンは思った。生まれたその日からマフィアとして育てられ、その方面の英才教育、つまるところ殺人に関するあらゆる技法と知識を詰め込まれ、7歳で初めて人を殺したときには、既に一流のヒットマンだったに違いなかった。あの女。神崎つぐみという名の、血を分けない娘。

その日はごくごく当たり前の日常の延長線にあり、誰もこれから起こる全てのことを知りえなかった。しかし、それは当然のことだ。ある一個人においてどんなに重要な出来事も、時には世界の破滅でさえも、その流れに逆らうことはない、それが日常の日常たるゆえんなのだから。
「リボーン」
名を呼ばれて、彼、リボーンは振り向いた。彼はその時、まだ幼さの残る、だが青年への道を確実に歩み始めていると見とめられる少年の姿をしていた。最後に生まれ直してから14年が経っていた。
「ああ」
どうした、明らかに一回り、いや二回りほどの離れているであろう男に向かって彼は応えた。相手の男の顔には苦悩とも焦燥ともとれるような、微妙な表情が浮かんでいる、それをリボーンは素早く察知する。
「何かあったのか?」
「ああ、あった、すぐ行ってもらいたい、場所は――」
「何があったのか、が先だろ」
「あ、ああ、そうだった・・・すまない、あまりに突然で、うまく頭が回らないんだ、すまない」
「何があった」
「ロンディーネが見つかった」
「 ! 調査班か」
「いや、カードが届いた、ついさっきだ、私のデスクの上に、差出人は不明だ、ロンディーネの名と住所が」
「・・・それだけでは信用はしきれないな」
「もちろん、でも嫌な予感がするんだ」
「・・・分かった、行く、カードを」
男からカードを受け取ると、リボーンはすぐに発った。白地に黒い縁取り、死を暗示するハガキ大のカードにたった2行。黒いインクで一行目に書かれた

"RONDINE"

その文字に、彼はひどく動揺した。ロンディーネ。美しき女神。美しき殺人者よ。それは、2年前にこの真っ黒な世界から忽然と姿を消した女の名前であった。そしてそれと同時に、リボーンの愛した女の名前でもあるのだった。ロンディーネ・ボンゴレ。現ドン・ボンゴレの妹にあたる女だった。


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ハチス [MAIL]

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