2006年08月21日(月) |
エロティック・スーパーノヴァ |
獄寺とつぐみが2人だけで任務に就くのは、それが初めてのことであった。つぐみがイタリアで正式にボンゴレ・ファミリーとしての承認を受けてから5年、ながいながい5年間である、その間に彼女はヒバリを諦め、獄寺と恋をし、自らの身体を流れる血にそれを阻まれた、そして今は、ヒバリでも獄寺でもない男と婚約をしている。ヒバリは結局つぐみより3年遅れてファミリーに入ったし、獄寺との禁忌も科学的証明によってうそであったことがまもなく分かった、が、それでも彼女はその双方ともまた関係をやり直すことはしなかった。未練がないわけではない、ただ、つぐみは安定を求めたのだった。日本で学生として流れるように生きていたころとは違い、今は血と硝煙と人のいのちを、その手で扱っている、敬愛すべきボス、同僚、部下、そして自分のいのち、その全てを護る必要があった、ファミリーのために、自分のために。しかし、ヒバリとのあまりに近すぎる関係も、獄寺との身を焦がすような恋慕も、きっといつか自身を、そしてそれに伴なってファミリーをも、滅ぼす一因となるやもしれない、それをつぐみは危惧したのだった。だから、彼女はバジルのプロポーズを甘んじて受けた、彼はとても穏やかで、かつ距離を測ることを知っていたし、近いようでとても遠い男だったからである。ブラッド・オブ・ボンゴレでないこともある意味ではとても、重要だった、つぐみはあの時のショックとわき上がる劣情をまた体内に感じながら、そう振り返る。彼の言葉をうのみにしてしまった浅はかさも、彼への憤怒の感情をも今に残さないほど、あのとき、彼女を乗っ取ったのは、自分を殺人者へとなさせた血が、愛しい男を汚したという事実、そして自嘲であった。きっと一生忘れることの出来ないであろうそれを二度と体現しないために、彼女はバジルの手を取った。彼がドン・ボンゴレの血縁者でないことは証明されているし、何よりも、ボンゴレであってボンゴレないその立場が、とても気に入っていた、あまりに近すぎるとそれはまた同じように歪んでいくのを知っていたからだ。
ビー、とホテルのベルが鳴って、つぐみは目を開けた。ベッドに寝転んで目を閉じたまま、眠るでもなく、ただ瞑想にふけっていたのだった。
「これで終わりにします、だから、」 「・・・できるの」 「えっ」 「終わりに出来るの、あなたは」 「つぐみさん、」 「私は・・・きっと・・・」
無理、と言葉をつなぐ前に獄寺が掴んだつぐみの腕を引いた。きっと昔より少しは力強くなったその腕で彼女を抱き、好きだ、と言った。
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