クマラトゥンガ大統領はスリランカ全土の緊急事態宣言を発令しました。日本のニュースでは大きく取り上げられていましたが、こちらコロンボでは普段と変わっていません。大統領府のあるフォート地区西側の警備が厳しくなったり、放送局、新聞社の警備員が増えたくらい。
でも最前線での警備は厳しくなっているのでしょう。ジャフナ地区で漁船のチェックが大変厳しくなったという報道がありました。政府軍はジャフナ地域へのLTTEの武器持ち込みを警戒しています。漁民にとっては迷惑な話です。
昨日の夕方、内務・国防、メディアの大臣とSecretaryの解任に加えて、財務省のSecretaryが解任されました。
私が働いている通信会社(SLT)は政府が49.5%の株式を保有しているでのすが、株主として権限は「財務省」が握っていたのです。そこの実質的なトップが交代されたことで我社にも今回の騒動の影響が及ぶ可能性がでてきました。
ところで今回のクマトゥンガ大統領の突然の行動なのですが、これまでの「和平ぶちこわし」のパターンに全くそっくりです。これまでも時の政府がLTTEと停戦交渉を何度か始めたことがありました。まずどちらかというとリベラルなシンハラ政権がLTTEとこ交渉の糸口を作って、停戦にこぎ着け、本格的な和平交渉に入ろうとするのです。ところがそこに極右的シンハラ勢力が口を挟むのです。そうしたそうしたグループの言いぐさは、「弱腰だ」とか「国に分割に繋がる」「彼等(LTTE)は信用できない」というものです。
その結果途中まで進んでいた和平交渉はつぶされ、内戦状態に戻ってしまうのです。ただ、この「ぶち壊し」も基本的には「国民の追認」が得られてきたのでした。それは貧困の問題とか経済停滞などが、この民族問題と複雑に絡みあってしまうのです。右派グループは内政の失敗と民族問題をごちゃごちゃにして時の政権を攻撃します。政治的なスキャンダルと民族問題を絡めて攻撃するのです。国民はその度に難しい選択を迫られてきました。
しかし、今回はウィクレメシンゲ首相率いる現政府に目立った失敗はありません。大統領が本格的に首相を攻撃するためには他の材料必要なのです。ただ、今回のように和平を邪魔した結果、内戦が再開し、LTTE側がテロでも仕掛けると、右派グループは「自分達の見解が正しかった、LTTEは信用できないテロ集団だ、そういう集団との交渉は我々が主張したように慎重に進めるべきだ」と言い張るのです。
あす7日の朝に、ウィクレメシンゲ首相が訪米から帰国します。新聞報道によると多くの首相を支持する人達が空港まで首相を出迎えにいくのだそうです。首相がどのように事態を収束させるか。明日は非常に重要な1日になりそうです。
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