ゼロの視点
DiaryINDEXpastwill


2007年08月26日(日) 滝行

 10月に予定している、私達夫婦&友人フランス人♂2名を引き連れての、関西旅行の宿をすべて予約し終え、ホッとしている私。11日間の旅程のうち、2泊は高野山の宿坊に宿泊して、阿字観などの修行も、非日本人にさせてみようと思っている。

 とある宿坊は、そこにいる坊さん全員が英語ぺらぺらで、例え日本人が宿泊していても、説明は全部英語という宿坊があるらしい。《こりゃ、自分が通訳しなくとも、誰かがやってくれるっ、ラッキー》とばかりに、1泊くらいこの宿坊で・・・、と考えていたのだが、団体予約が入っているとのことで、アウト。それでも《英語が通じる》レベルの宿坊があったので、そこに1泊と、日本語オンリーの、伝統的宿坊に1泊することで一件落着。

 さて、修行といえば、2005年の10月のこと。今回の高野山にも私達に同行することになっている従姉H嬢だが、2年前の秋、彼女に導かれるように、私達は、秩父国立公園内にある、武蔵御岳神社のS宿坊へ1泊して、滝行をしてきたことがある。標高929mの御岳山からは、新宿副都心がよく見える、都心からも近くて便利なのだが、奥へ行くと、グッと神聖な空気が満ちてくる不可思議な場所でもある。

 夕方、S宿坊を営むと同時に、神職のH氏に導かれて、皆で山の奥へ歩いていく。かなり歩いたところで、男女で分かれて、滝行用の白装束に着替える。頭に、白の鉢巻を巻きつける頃には、こんな私でも気分が引き締まってくるから不思議だ。男性は、フンドシをしめるのだが、うちのオッサン、わかるんだろうか?、と、想像し、ひとり不敵にニヤニヤしてしまう。

 着替えも完了し準備が整ったら、滝のふもとに集合。参加者のほとんどは女性で、男性は我が夫と、神職H氏と、もう一人の日本人男性のみ。どうやって着替えたのかしらないが、きちんと白装束になっている夫を発見し、ちょっとだけビックリ。

 滝に入る前に、皆で気合を入れて、掛け声を掛け合う儀式があるのだが、それを経験者に交ざって、懸命にやる私達。日本人の私でも、マントラ的な日本の言葉は、なかなかよく覚えられないので、ちょっと混乱したのだが、夫のほうは、よくわからないまま、ミミに聞こえてきた音を大声で反復している。どうやら、彼、やる気満々のよう・・、だ。

 そして、いよいよ順番に滝にはいる時がやってきた。一人20秒ぐらいを目処に、《祓戸大神(はらえどのおおかみ》と唱え続けると同時に、振魂(ふりたま)という、両手を丹田のところで合わせ、上下に振る行為をしながら滝に打たれることを、各人3回行うのが基本。

 滝行参加者は10数名いたのだが、私達が順番に滝に打たれている間、神職のH氏は、ひたすら冷たい滝つぼの脇で、滝水につかりながら呪文を唱えている。見ているだけで、《水に浸かりっぱなしな彼の足は、寒くないのか?》等と気になってしまうほど。

 一方、私のは、他の人のやり方をみてから・・、と思って、最後の方に並んだはずなのに、あっという間に自分の番になってしまい、恐々と水に足を入れると、マジ、冷たいっ・・・・・。《どうすんだよ〜(涙)》という気持ちになったものの、もう後には引けないので、破れかぶれな気分で滝の下に入り、振魂をしながら、《祓戸大神(はらえどのおおかみ》と唱え続ける。

 滝の水圧をもろに頭頂部から背中にかけて受ける経験ははじめてだが、これはかなり衝撃的っ。等と思っているうちに、20秒ほどがあっという間に過ぎていった。

 そして、お次は、夫。ちゃんと日本語で言えるのか?、と思いつつ、興味津々で見ていると、夫は、あまりにも冷たい水のショックなのか否かはわからないが、何かがブチ切れてしまったかのように、腹の底から出てくる大きな声で、妙なガイジン訛りで、、《祓戸大神(はらえどのおおかみ》と唱え続けはじめた・・・・。

するとどうだろう・・・・。夫の声が異様に大きく、なおかつ、水の衝撃と冷たさで、声が小刻みに震えているというオマケつきで、神聖な滝行が、皆が大爆笑を引き起こし、神職のH氏まで噴き出しそうになっていた。

 その上、滝に打たれる姿勢が、夫の場合、修行というよりも、《日本軍に拷問にあっている外国人捕虜》という感じで、本当に苦しそうでみじめな雰囲気・・・・。いくら、《祓戸大神(はらえどのおおかみ》と唱えたところで、私達の耳には、《助けてくれ〜っ !!!》にしか聞こえない不思議。

 黙々と耐え忍び、自己を見つめ、自我から解放される・・・、という修行の原点からあまりにもかけ離れてしまっている夫の醜態は、コメディ映画そのもの。

 こんなものを見せつけられた後で、緊張感を保つのはかなり厳しい。が、それでも、また自分の順番が回ってくると、さすがの水の勢いと冷たさで、シャキっとし、なんとか、20秒×3セットの滝行を終えることができた。

 そして、夫のほうは、3回目になる頃には、もう、《祓戸大神(はらえどのおおかみ》という声が、絶叫に近くなってきていた。そして、振魂をするのはいいのだが、その上下の動きもやたら大振りなものになっていて、本当に奇妙な生き物みたいになっていた。

 さて、後日・・・・。滝行をやりながらも、巧妙に夫の姿などを、一眼レフにて写真撮影しておいた私。あらためて、パソコンの画面一杯にその時の写真を映し出してみると・・・・。

 マジマジと写真を観察したのだが、水が頭部に突き刺さるように当たった時に、《オエェッっ !!!》とか、《ウゲェェっ !!》とか、ゲロでも吐く瞬間のような顔で、白装束の夫が写っている。そして、もう一枚の写真には、呪文を唱え続ける神職H氏のほうを、なみだ目で一心に見つめ、《もう滝壷から出ていい?》と、必至に訴えているかのような彼の姿がそこにあった。

 夫は、滝行をして、何かを悟ったんだろうか?。それとも、浄化としょうして、《きったねえ》ものをすべて出し切ることに成功したんだろうか?、と、考えてもきりがないことを、今になっても想像し続けているゼロでした。一方、夫は、《二度と滝行なんかはしたくない》ということだ(笑)。


Zero |BBSHomePage

My追加