ゼロの視点
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2007年09月03日(月) Ravalement

 今年の夏は、久々にどこへもでかけず、パリに居残っていた私。

 Ravalement という、アパルトマン外装塗り替え工事が、この夏に行われると知った春先には、《バカンスにも出かけず、暑い夏にパリの自宅にいるというのに、、一日中窓を閉め切って生活しないといけないのかっ ?!?!?!》と一人激しく憤慨していたものだった。が、そんな杞憂もアホらしくなるほど、実際にその時期がやってきたら、例年にない冷夏で、《窓閉め切って》ないと寒い毎日だったパリ。

 この工事のために、工事人たちはアパルトマンの周りに足場ガッチリと作る。で、この足場のせいで、普段よりも泥棒に入られる確率がグンとアップするゆえ、窓を開けっぱなしで出かける、乃至は窓を開けっ放しで寝ることができないのは、不便と想像していたが、ま、ここまで寒いとしょうがないか・・・・?、と、いとも簡単に諦められる、今年の夏・・・・。

 夏の初めに、この足場造りがはじまった。いつものように窓に身体を向ける姿勢でパソコンをいじっていると、自分の目線でふと人が横切るのが見えて(日本でいう6階の高さ)、ギョッとする。そして、ああ、ついに、うちの高さまで足場が組まれてしまったのか・・・、と悟る。

 つい好奇心でカーテン越しから、工事人がどうやって足場を組んでいくかを観察。工事人の9割は黒人で、残りはアラブ系の方々。彼らが、実に楽しそうに歌いながら、足場を軽やかに組んでいく。上と下で、器具の受け渡しをするのだが、この方々は、大声&現地語でやりとりしているので、サッパリ私にはわからないのが、また妙におもしろい。

 最初はだたの鼻歌レベルだったのに、私と窓一枚を隔てた向こうにいるアフリカ系工事人が、、徐々にハイになってきたのか、ボリュームアップして、リンガラポップのようなものを歌い上げ始めた。おいおいおい・・・・、ちょっと勘弁してくれよ・・・、と、パソコンを前にして、少々根を詰めることをしていた私は、最初こそ当惑していたものの、もう最後には、彼らのハイテンションに持っていかれて、自分までコンゴに行ってしまったかのような気分になっていた。

 私の目の前の人がメインで歌っているのだが、他の場所で同じように足場を組んでいる人らが、調子よく、彼の歌に合いの手を入れ、リフレインでは、調子よくはもったりもするから、これまたビックリ。そのくらい、気持ちよさそうに歌いながら、足場組みの鉄筋を肩に担いで、私の前を何度も横切る。

 彼らの歌に、知らない間に巻き込まれていくうちに、アメリカに連れてこられた、黒人労働者が、キツイ環境の中で、自分たちの祖国を思う魂を歌い、踊り、労働者の中で団結を強めてきたというイメージがふと、アタマの中に浮かんできた。

 《おめえら、うるせーよっ !!!》と言うことも可能だったかもしれないが、うるさいけれど、生きていく《逞しさ》に溢れた歌声は、妙な説得力を持って私を誘ってくる。ま、さすがに、一緒に、合いの手を入れることはなかったが、気がついたら、私も身体でリズムを調子よく刻んでいた。自宅にいながら、アフリカ大陸・・・・・、うーーん、これも悪くないな、と思ったゼロでした。


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