ゼロの視点
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2004年11月16日(火) 失われた時を求めて・2

 校門の先には、懐かしい光景があった。一歩一歩足を進めるたびに、昨日まですっかり忘れていたはずの膨大な記憶が蘇ってくる・・・。当時、わけのわからぬ不満を抱えて、仏頂面だった自分を追体験しているかのようだ(汗)。

 通いつめた仏文研究室まで行ってみた。現教授陣の名札を眺めつつ、未だにわしの恩師の名前が存在しているのに、再び私の時間軸が狂っていく。

 そこだけには留まらず、まだまだ独り構内探検を続ける私。かつて、溜まり場にしていた、建物は取り壊されているのを目の当たりにして、心臓がチクリ・・・。今は、妙にピカピカした現代建築が、当時の建物の後に堂々と存在していた。

 その瞬間、また私はようやく現在に立ち戻ることができた・・・。“ああ、昔と変わってしまったんだ・・・・”と思うことで・・・。

 構内の喫煙スペースで、ボーっとタバコを燻らせた跡、ようやくここを離れようと再び校門のほうへ足を進めはじめた。すると、私が向かっている校門から、何故か、心当たりのありシルエットが、今まさに構内へと向かって進んでくる・・・。

 げ、げ、げ・・・・・・・。

 しばらく、このシルエットにじっくり焦点をあててみる。どんどんこちらの方向へ迫ってくる、見覚えのあるシルエット・・・。

 げ・げ・げ・・・・・・・。

 それは、まさしくわしの恩師の姿だった!!!!!!。

 こんなことがあるのか?!?!?!。

 私は、この恩師とゼミの仲間と一緒に1998年の2月、イラン旅行へ旅立った。そして、その旅行の終わりに、私はヨーロッパに立ち寄り、そのまましばらくブラブラしたあと、夫に出会って、そのままフランスに住み着いてしまったのだった。

 確かに、恩師には非常に目をかけてもらったし、いろいろなことを学ばせてもらった。が・・・、イラン旅行中、恩師のことがだんだんと鼻についてきて、この旅行を最後に、この一連の付き合いから“足を洗おう”と思って、そして今がアル。

 なので、迫り来る恩師のシルエットを前に、本能的に木の陰に隠れる私・・・・。とはいえ、どうもこのシルエットから目が離せないので、彼が視界から消えるまで、ずうっと木の陰にいる私・・・・。これじゃ、まるで、星飛馬のねーちゃんじゃないかっ!!!、と、ひとり突っ込みを入れながらも、金縛りにあったように留まりつづける私だった。

 恩師が昨年、還暦を迎えたことは知っていた。そして、彼の還暦パーティーの招待客リストには、私の名前があったらしいことも、風の噂で知っている。が、私の居場所も特定できず、そのリストには、“ゼロ行方不明”となっていたらしい。

 私が影から見送った、当時と同じシルエットを持った恩師は、それでも、かなり老けたように感じられた。

 それが、また、私を現実に引き戻してくれたともいえる。が、この過去と現在を、振り切ったブランコのように激しく行き来する私の感情は、どうすればいいのだろうか?!?!?!。

 なにがなんだかわからないまま校門の外に出て、またパブロフの犬のように、都バスにのって、もうひとつの懐かしい駅へ向かう私。この駅界隈も、よく飲んだり食ったりしたものだ。

 また、ついつい好奇心に駆られて、当時のなじみの店などを探検してみると、その8割が消滅していた・・・・・・。特に、私の大好きだった水餃子の店が無くなっていたことは、かなりの衝撃だった。

 そして、校門を出た時点に拍車をかけるように、もっとフラフラしていた私は、気がつくと、また違う都バスに乗っていた。

 今までが学生時代のおさらいだったとしたら、このバスは、私の社会人時代へと誘うバス路線だった。

 恐ろしいことに、このバス路線は、あまり変わっていなかった。でも、私が働いていた場所だけは、かなり変わっていた・・・。あれから何年経ったのだろうか?!?!?!、と思うと、もう訳がわからなくなってきた。

 とはいえ、まだぽつぽつとある残滓・・・・。これをどうやって、即座に私の乏しいアタマが統合できようか・・・・・・・・?!?!?!。バスの車窓から、また当時の膨大な記憶が私のアタマを占領する。過去・現在が秒刻みで行き来する。

 そして、結局私はこのバスの終点まで、降りることもできず、乗りつづけた。そして到着した場所は、夫と一緒になる前に、暮らしていたオトコが現在働いている場所でもあった。

 もしかしたら、“一緒に昼飯でもどお?!?!”と彼に電話すれば、それは可能だったと思うが、ここに来るまでに、かなりアタマがグチャグチャになっていた私は、この駅からまっすぐ実家に戻ることを選んだ。

 あとは、実家に戻るだけ・・・・、としばらく何もせず、電車のシートに座っていた私だが、ふいに手元にある雑誌を読み始めてしまった。

 その雑誌とは、“パリマッチ”・・。昨晩、P&Fが私に、“フランス語も懐かしいだろうから、暇つぶしにこれあげるよ”と、機内誌を私にくれたものだった。

 真昼間の電車、そして車窓からは、典型的な日本の風景、でも、フランスの俗物雑誌“パリマッチ”を読んでいても、充分その話題についていける・・・。そう・・・、それはまるで、日本のワイドショーを見るかの如く・・・。

 このパラレルワールドに、またまたアタマがクラクラする私。

 私は、一体、どこにいるのだ?!?!!。
 私は、何をしているのか?!?!?!。

 わからん、わからん、わからん。

 そして、苦肉の策で、私の周りの乗客の姿を見ると、多くの人が携帯でメールを打っている。が、これはフランスでも当たり前になっている今、私がどこにいるかをわからせてくれる、決定打にはなり得ない。

 が、メールを打つ人たちの手元に視線を集中させると、あきらかに、フランスの携帯とは違って、もっと最新式だったりするので、やっと私は日本にいるのだ・・・・、と、実感できた(汗)。

 

 ようやく、実家の最寄駅に到着した私だったが、このまま我が母の世界に直帰するのも耐えがたく、実家近くのモ〇バーガーで、無料の求人情報を暇つぶしに読みながら、ライスバーガーセットをペロンと平らげたゼロでした。
 


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