ゼロの視点
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友人宅に宿泊させてもらっている、というのに、相変わらずの朝寝坊のわしら。起床したらもうすぐ正午、という頃だった。
慌てて階下に下りていくと、T氏はクールに読書。Bは仕事場へ、そして3人の子供たちはすでに学校へ出かけた後だった。
Yも用事ができたらしく、少し前に出かけたあと。
しょうがないので、わしら夫婦とT氏で、キッチンでコーンフレークを、寝ぼけたまま食べる。
そこにYが戻ってきて、ちょっと話しはじめると、もう止まらない。Yは自宅が仕事場ゆえ、邪魔しちゃ悪いと思いつつ、Yもベラベラ話すし、こっちもツイツイそれに乗って、ベラベラ・・・・。
気がつくと時計はすでに午後2時をまわっている・・・・。せっかくT氏を連れてきたので、ロワール川ほとりの城めぐりでもしようと思っていたので、この時間じゃ、城ひとつみるだけでもヤバイ。
なんせ、T氏には、わしらが大阪・京都に行った時には、寺巡りのガイドをやってもらっているため、その恩返しがしたいわしら。ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
で、どうにか出発して、とある城へ。入場料6.10ユーロなり。ガイドに伴われて、城の中を見学したあと、Y&Bがすすめてやまなかったこの城脇にある、庭園見学へ。入場料、8.50ユーロなり。
高いっ、と思いつつ、Y&Bがあそこまで薦めたのだから・・・・、と園内を歩き出すも、どこまで歩いてもつまらない。つまらーーーーーーーーーーーーん。これで8.50ユーロかと思うと、イライラさえしてくる。
敷地だけは馬鹿でかく、かなり歩かされるうえに、空の雲いきがどんどん怪しくなってくる。T氏が“ヤバイで、あとちょっとで雨が降ってくるで・・・”と言い始める。
えっ、まさか、と思いつつ、8.50ユーロの元をせこくとろうと、まだ庭園鑑賞をやめずに進むわしら。ついに雨が降ってきた・・・・・(涙)。
苔の庭、なんてものがあったが、美しい苔の日本庭園を見慣れている日本人にとっては、信じられないお粗末な庭もあった。焼け跡に残った木に、数年後ちょっと苔が生えただけのようなシロモノに、思わず絶句。
城見学は充実していたが、それよりも入場料も高く、インチキな庭園観光で思わぬ時間を浪費したわしらは、駐車場のクルマに戻ったのが午後7時。
それに対して、パリ某所のレンタカー会社にクルマを午後10時までに戻さなくてはいけないわしら。
城から、Bloisまで30分ほどかけて戻り、Blois駅にて、今週末に利用するTGVのチケットを購入などしていたら、すでに午後8時ちょっと前。
どしゃぶりの雨のなか、夫の運転でパリに向けて高速道路にのる。酷く水はけの悪い道路で、視界が非常に悪い。レンタカーを午後10時返すためだけに急いで事故るのはたまらん、と思いつつ、夫はアクセルを全開にする。
後部座席からT氏が、“昔、中国道を走ってたら、ハイドロになって、死ぬそうになったで・・・・”とのお言葉。私も、その危険性をちょうど考えていたところ。
さて、このことを夫に話そうかどうか迷ったが、妙に暗示にかかりやすい夫に、わざわざ危険な可能性を話すと、余計ヤバくなって、本当にハイドロを起こすかもしれないので、言わないでおくことにした。
道中、パリまで何キロとの表示と、スピードメーターを見比べては、パリ予定到着時刻を計算。今、何キロ地点だから、あと10キロスピードをあげろ云々などを、助手席で鬱陶しくも、夫に指示を続ける。
刻々と近づくタイムリミットと、パリの街並み。果たしてわしらは本当に、午後10時までにクルマを無事に返却することができるのだろうか?!?!?!。
パリのはじっこまでに、9時10分すぎに到着することができた。あとは、ペリフをうまく利用して、目的地に到着するだけ、と一安心するも、まだ私たちにはやることがあった。
返却寸前に、ガソリンを満タンにしなければならないのだ。色々思い巡らせて見ると、某所のレンタカー会社の周りに、安いスタンドがあることを思い出し、問題がひとつクリアーされてホッとする。
すると、だんだんとクルマが増えてきて、速度が落ち始める。事故などもあり、なかなか前へ進めない・・・・。夫が焦り出す・・・・。
ペリフをおりたところで、クルマを停めやすいガソリンスタンドを発見したので、急遽そこに突入してエンジンを止めて、ホッとしたのも束の間、このスタンドがすでに閉店していることを知り、夫の焦りに拍車がかかる。
夫は怒り狂って、クルマを急発進させて、再びレンタカー会社へ猛スピードで向かい出す。この時点で午後9時35分。
ふと、不安になったので、私が夫に“ところで、どこにクルマを止めるて、返却するか、本当によくわかってる?”と聞くと、夫は“よく覚えてない”と答える。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
やっぱり、だから、そうだと思った、と言うとやぶ蛇なので、穏やかになんで覚えてないのかを聞いてみる。と夫は、先日クルマを借りた時、クルマに乗ってエンジンをかけた瞬間、無意識にその場所から出てきてしまって、家にもどってきたからだ、ということが発覚。
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日本とは違って、“返却時のこと”についての案内および地図なんてものは、ないのがフランス。
唯一夫が覚えていることは、巨大パーキングの中で、地下6階ということだった。わしらのレンタカー会社の事務所近くには、少なくとも巨大パーキングが3つある。
とりあえず、夫がここだっ!!、と自信をもって言い張った巨大パーキングにクルマを突っ込み、地下1階、2階、3階、4階、とクルクルまわりながら降りていく。そして、地下5階になったところで、もう一度クルクルして地下6階におりようとすると、そこは壁・・・・・(涙)。
ここには、地下6階はなかった・・・・・。
ということで、振り出しにもどり、夫は怒り狂いながらクルクルと回って、今度は上がっていく。その間、助手席の私と、後部座席のT氏は息を殺しながら、目が回っていた。
間違えて入ってしまったパーキングの兄ちゃんに、もうひとつのパーキングの行き方を尋ねると、丁寧に教えてくれる。そして、勢い良くパーキングを飛び出した時点で午後9時50分。
が、兄ちゃんが教えてくれた方向はまったく逆だということに気づいて、木が触れてしまったように怒りまくる夫が、ものすごい勢いでクルマをバックさせて、走り出す。この時点で午後9時53分。
絶望的になって、直進したらやっと別のパーキングの入口を発見。タイヤをキーキーいわせて、そこへ飛び込み、パーキングチケットをゲット。そのチケットに刻印されていた時刻は、なんと午後9時59分だった・・・・・。
ギリギリセーフっ。
あとは、ゆっくりクルマを止めて、レンタカー会社のカウンターへ行き、パーキングチケットに刻印された時刻を見せて、確かに午後10時前に到着したことを主張して、超過料金の支払いを免れたわしらでした。
ああ、サスペンス。
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