ゼロの視点
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2004年08月16日(月) アルル

 朝から、またヨットの掃除。もう嫌だ、と思いつつ、恩もあるのでせっせと働く、乃至は、働いているフリ。

 さて、船長Eとその彼女Mは、昨晩の“蚊事件”のこともあって、喧嘩中。ただ喧嘩といっても、Eが全くMと喋らず無視を決めていて、MはそんなEに“手伝ってやらない”という態度で対応しているだけなのだが。

 喧嘩中のカップルから醸し出される“独特の空気”というものは、なかなか興味深い。おまけに、いつもはクールな精神科医として、バリバリ働いているEが、こうしてプリプリしているのが、妙に笑える。

 さて、Eは、昔フランスでベストセラーになったという本を書いた女性Valérie Valèreの、実兄。

 昨年の12月頃、いつもように自宅の郵便ボックスを開けると、私宛にEからの小包を発見。中を開けてみると、一冊の本が入っていた。それも日本語の本で、内容は拒食症の話・・・。

 この本の表紙を開けると、扉にEの私宛の寄せ書きが・・・。ワシは拒食症でもないし(その反対で、大飯喰らい)、なんで、なんで、なんで?!?!?!。このくらい痩せろ、ってのか?!?!?!。

 まったくもって、事情を理解できなかった私は、すぐさまEに電話すると、彼の亡き妹Valérie Valèreの本が、日本語に翻訳・出版された記念に、私に郵送してくれたことがわかった。

 Eの妹は、思春期に拒食症をわずらい、両親に精神病院に入れらた。そしてその時の体験談をかなり挑発的な作品に仕上げ、出版。たちまち話題の本となり、彼女は売れっ子の作家になっていく。

 が、有名になると同時に、彼女の周りには胡散臭い人間が集い出し、やがて彼女は薬物中毒となっていく。もともと自己破壊的なところが激しく強かった彼女は、21歳で薬物の過剰摂取で他界するまで、数冊のベストセラーを出版している(←私は、まだ全部読んでないが・・・・)。

 そして、こんな過程もあり、Eは精神科医の道へ進んでいったのだった。

 ただ、ヨットの掃除しているだけだと気が滅入ってくるので、EにValérie Valèreの本の内容について、執拗に質問して、気を紛らわす。色々と裏話をゲットできて、個人的に大満足なゼロでした。

 それにしても、Eの亡き妹と、ふとした表情が非常に良く似ているEの長女J(12歳)。時には生き写しのようにも見えるから、Eの両親はどのように孫娘を見つめているのだろうか・・・・・?!?!。

 Valérie Valèreの生涯についての本なども出版されているが、個人的にはその兄であるEの生涯のほうもかなり波乱万丈で、面白そうな気がしている。人の話を聞くのが商売ゆえ、なかなか自分の話をしないEだが、時間をかけて探りたい好奇心に駆られてくる。




 さて、午後3時、港の送迎タクシーが私たちを迎えにやってくる。

 昨年は、この送迎タクシーの運転手の運転が酷く荒く、心臓が止まる思いがした等、Mから散々聞かされていたが、今回、わしらを迎えに来た運転手は同じ人間であることが発覚・・・・(汗)。

 キレイにしたヨットを後に、荷物をまとめてわしらはタクシーに乗り込む。わしら夫婦はアルルまで、そしてE一家はその先のアヴィニョンまでタクシーで運んでもらうのだが、本当にこの運転手の運転は荒いのだろうか・・・、等と考えているうちに、タクシー発進。

 ひえーーーーーーーーーーっ、というくらいのスピード狂運転手。窓からの景色が早すぎてよく鑑賞できない。タイヤも磨り減っていて、グリップの悪さがもろ尻から伝わってくる。

 乗客全員でブーブーと文句を垂れるが、運転手はお構いなし。一般道を時速180キロで走行するのだけは、勘弁してくれーーーー。

 ようやくアルルに到着した時には、みんなヘロヘロ。EとMの次女Mに限っては、タクシーから降りた瞬間、吐いてしまったほど。そんなMを見て、母のMは“今度からは、運転手にこの辛さをわからせるために、彼の顔面に吐いてあげなさいっ!!”という言葉に、思わず笑ってしまった。

 ちょっと休憩したあと、E一家はこの運転手とアヴィニョンへ向かった。ここでお別れだ。

 そして、わしらはアルルで、本日から2泊。コルシカではクルマの旅、コルシカから南仏まではクルージング、そして、わしらの最終バカンスは、徒歩での観光に切り替わった。

 アルルの観光案内所で、たまたま紹介されたホテルが見事ヒット。ホテルの窓からローヌ川が見える。まるで未だ船の中にいるような錯覚を起こすが、足元が揺れない不思議さ。

 さあ、今晩はゆっくりとシャワーを使えるっ!!、と思うと、妙に幸福に感じたゼロでした。


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