ゼロの視点
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2004年08月11日(水) セーリング

 昼過ぎまで、相変わらずIle de Porquerollesの入り江にヨットを停泊させたまま、わしらはそこから海に飛び込んで海水浴。

 朝食後に、とりあえず“海にドボーン”という生活が癖になりそうだ。海の水が限りなく透明で、水中眼鏡をつけて海中に潜ることなく、水面下が拝める快感。

 停泊中のヨット族に向けて、商売上手な人間がボートでクロワッサンを売ってまわる。わしらもついつい食欲に負けて、クロワッサンやバゲットを購入。ううん、やられた・・・、と思いつつ。

 と同時に、これがオニギリと味噌汁だったらもっといいのに・・・、等と、ひとり心の中で呟く私。潮風に吹かれながら食べるオニギリは、たいそう美味しいだろうに・・・・。

 
 さて、昼過ぎに出発。本日の行き先は、Cassis。

 風もないので、モーターで小一時間ほど進むと、だんだんといわゆる“セーリング”するのに都合がいい風が生じてきたので、ここでモーターを切る。いよいよ青空の下での、セーリング体験。

 まずメインセールをはり、次にジエノアというジブセールをはる。この作業がなかなか体力を必要とする。そして、セーリングで重要なロープワークの一貫を見学(←たまに手伝うが・・・)。

 グループワークなので、息が合ってないとなかなかうまく行かない。協議中などは仲間割れして、ヨットの速度が落ちることもあるらしいから、なかなか興味深いものだ。

 セールをはるだけでも面倒くさい作業なのに、これを風と進行方向の具合でちょくちょく張り替えながら進まないといけないのがセーリング。

 もともとヨットは風上に向かって一直線に進めないので、斜めにジグザグで進んでいく。そして、その方向転換として用いる作業が、タッキングといい、風を受けるジエノアという、メインマストより先にはってある三角帆を、随時はりなおして進まなくてはいけない。

 これをはり直すたびに、ヨットが左右に大きく角度変化。ジエノアが左に膨らんでいた時は、右側が海面スレスレになり、また逆もしかり、という感じ。

 そして、角度が変化するたびに、乗組員のわしらも場所をかえる。

 途中から、船長Eに変わって、夫が舵を握らせてもらった。が、ヨット初心者にとっては、いくら説明されて頭でわかっていても、なかなかジグザグで進んで行くという感覚がつかめない。

 目的地は右側にあるのに、左側へ進まなくてはならない仕組みを、身体で覚えるには時間がかかる。

 すると、わしらの前方に失速しはじめたヨットを発見。こうなると船長Eのレース魂に火がついて、“絶対に追い抜いてやる”というモードに切り替わる。そして、Eのアドヴァイスにのっとって、夫は舵を取り、残るわしらは指示に従いロープワークや、帆の張替えなどをする。

 これが、最初は面倒くさいと思っていたのだが、なかなか面白いのだっ!!。こんなことしょっちゅうやってたら、いつか癖になってそうで怖い(笑)。

 そのうち、どうやらEのヨットがなかなかプロな動きをするのを察知したらしい、周りのヨット2艘が、Eの動きをそのまま真似てくる。

 Eのヨットが帆を張り替えた瞬間、後ろの船も一斉に帆を張り替えて、いかに有効に進むかを競ってくるから面白い。ああっ、だんだんとドーパミンが出てくる・・・・っ。

 夫は元来なら人に命令されるのが大嫌いなのだが、今回は自分があまりにも初心者ゆえ、非常に素直にEに従っている。じゃないと、抜かれるものね、夫よ(笑)。

 結局、Eのねらい通り、抜きたいヨットはほとんど抜けた。みなで、“今ごろ抜かれた奴らは、激しく落ち込んでいるに違いないっ”“で、精神科医のところへ行って、鬱だなんだと自分を語るんだろうなぁ”と笑う。

 というのも、船長Eは、本業は精神科医。もし本当にヨットを追い抜いて、相手がガックリして、彼のところへ患者としてやってきたら・・・・、と考えると妙に笑える。

 こんなことをしているうちに、目的地のCassis脇の、ヒトケの少ない入り江に到着。ここで停泊すると揺れる一晩になることはわかりきっていたが、景観の美しさを優先。

 日没頃からのんびりと夕食。Eが一番好きという、Léo FerréのCDをかけ始めた。すると、Eの彼女Mがイライラした顔で甲板に上がってくる。なぜなら、MはLéo Ferréが大嫌いなゆえ・・・。

 そして、甲板のうえでLéo Ferréについての大論争がはじまった。夫もLéo Ferréが大好きなので、当然Eの側につく。そして、MとMの娘達はLéo Ferré
大嫌い派。

 ある程度議論が白熱した時、ふと沈黙が訪れた。その直後、全員が私のほうを向いて、“で、ゼロはどっちなのよっ!!”と詰問されたので、のらりくらりと“Léo Ferréは好きだけれど、Léo Ferré命ってわけじゃないし、彼のあまりにもメランコリックでいる自分が大好き、ってところはどうかな・・・、って思うわけであり・・・”、と答える。

 いずれにしても、Léo Ferréごときで、ここまで熱くなれないので(笑)。しかし、こうやってムキになって話している人達をみながら、自分だけちょっと引いて、うまい酒を飲むのは楽しいものだっ!!!!。
 


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