ゼロの視点
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朝食をとりながら、今後の予定について夫と話す。というのも、予定ならあさっての夕方から、友人E&Mカップルの船にAjaccioから乗り込むことになっているのだが、今晩と明日の晩をどこで過ごすか?、というのが完全に未定。
今いるPortoの宿は、格安で過ごしやすいので、もう一泊してダラダラしようか?!?!?!、等と2人で話がまとまりそうになった時、E&Mカップルから携帯に連絡が入ってきた。
“予定を繰り上げて、明日の昼にはAjaccioに来て、船に乗り込まないか?”
という誘いだった。明日の夕方にはレンタカーの契約も切れるので、本当にちょうどいいので、即OK。今晩はAjaccioで一泊して、明日に備えることになった。
12時にホテルをチェックアウトして、またまた近所のスーパーで惣菜などを買いこんで出発。
道路は相変わらずクネクネ道。安全運転を心掛けながらも軽快にドライブしていると、渋滞に遭遇。なんでこんなところで?!?!?!、と前方をよく見渡してみると、なんと交通事故っ。
私たちのすぐ前のクルマはすでにカラッポ。どうやら事故を見に行っているらしい。それなら・・・・、ということで私たちもすぐクルマを降りて、いつものようにヤジウマ根性丸出して事故現場へ進む。
どうやらカーブで対向車が完全にセンターラインを超えて、真面目な50代の夫婦のランドローバーに突っ込んできた模様。ランドローバーのエアーバッグが衝撃の強さを物語っている。
一方、突っ込んできたまだ20代になるかならないかのカップルのクルマの前部はグチャグチャ。オイルなどが物凄い勢いで漏れている。
一見派手な事故だが、幸いなことに死者はなし。なので、事故当事者の話しに夫と2人で耳を傾ける。
事故を引き起こした青年は、妙に正直で、自分が居眠り運転していたことをあっけなく白状。昨晩マルセイユから船でやってきて、その道中は酒飲んで徹夜で馬鹿騒ぎしてたので、まったく睡眠をとっていなかったとのこと。が、運転には自信があったので、寝不足のまま目的地に辿り着くためにハンドルを握ったらこのアリサマ・・・・、ということだった。
巻き込まれた50代の夫婦は、運転していたのが妻のほうだったらしい。彼女は冷静に保険屋に提出する書類に必要事項を書き込んでいたが、ふと彼女の 夫が優しく彼女の肩に手をかけると、今までの緊張がはじけたかのように、激しく泣き出した。こういう光景はツライ。一瞬にして、バカンスの楽しみが奪われてしまったのだから・・・・。
彼らはコルシカが大好きな、フランス北部(太陽の少ない地域)在住で、今まで20回以上このコースを問題なく旅してきた、とのこと。昨年、夫のほうがかかとの手術をしたらしいのだが、今回の事故の衝撃でまたそこを打ってしまい、彼は今、足をひきずるようにして歩いている・・・・。
きっとこの事故は、私たちがここを通るほんの数分前に発生したのだろう。まだ警察や救急車も到着していなかった。と同時に、道の状態とそれに反比例するような無謀運転の数々を目の当たりにしてきた私は、絶対、わしらの旅行中に事故に遭遇するな・・・・、と抱いていた勘が当たってしまったことに、驚く。
とにかく、油断はできない交通状況に感じられたのだ、私には・・・。自分がいかに安全運転してても、これじゃいつか巻き込まれるな・・・・、というような・・・・。自分達が巻き込まれたわけじゃないが、とはいえ、本当に被害者が気の毒に思われて仕方がない。
減速もせずにコーナーを、センターライン思いっきりはみだしながら走るクルマってのは、マジで怖いものがある。
ちなみに、この事故に巻き込まれた女性運転手は、昨日、もっと酷い事故に遭遇したと語っていた。その事故では、女性が亡くなってしまったとのこと・・・・。
被害者のほうに、わしらのクルマのトランクにたくさん積んであったミネラルウオーターの一本を取り出し、それを差し入れにあげた。彼女らは、ゴクゴクとそれを飲み干した。
事故を見た後、気持ちを取り直して、また一路Ajaccioへ進みだした私たち。Cargèseに差し掛かったあたりで、クルマをとめてしばし大自然の美しさに酔う。断崖の中腹から下を見下ろすと、エメラルドグリーンのビーチが見える。と同時にどうしてもそこへ行きたくなったので、引き返してしばらくそこで海水浴することにした。
そこのビーチの名前は、Plage de Mésaina。白く細かい砂が足の裏に心地よい感触を残す。例年なら、たくさんの観光客で賑わっているのだろうが、さすがに30〜40%も観光客の少ない今年は、わしらにとっては都合がいい。芋洗い式なビーチなんてのはたまらんので・・・・。
さっそく浮き輪持参で海へ飛び込む私。泳ぐという行為でエネルギーを無駄遣いせず、海で長時間漂流していたい私にとって、浮き輪の存在は重要。波も適度にあって、時間を忘れるほど楽しんだ。
が、夫がなかなかやってこない。どうしたのだ?!?!?!。とビーチを見ると、まだ荷物の隣に座っている。しばらく夫のことを海の中から観察していると、その数分後彼はようやく決意したように、水中眼鏡を装着して海に潜り出した。
そして、一直線に私のほうへ向かって泳いできて、私の浮き輪を掴むと同時に水中眼鏡を取り、開口一番“バックを見張らないとっ!!”と、非常に不安げな様子で一言・・・(汗)。そして、再び水中眼鏡をつけて海に潜り、ビーチに戻っていった夫。
いちおう夫のあとについて、ビーチに戻ったり、夫に“盗まれたっていいじゃん、平気だよっ”となだめるが、夫はまだ心配らしい(笑)。というより、どーして君は貴重品をビーチにもってくるのだっ!!!!!!、と内心怒りもあったのだが。
それにしても、私は海の中に戻りたい。どーしても戻りたい。できることならすぐ・・・・。
しょうがないので、夫の貴重品を砂の中に埋めた。すると、今度は夫が、“もし埋めた場所がわからなくなったらどうする?”と妙な質問をしてくるので、“その時はその時だっ!!”と答えて、私はまた海へ戻った。
しばらく海で漂流していると、突然、私の浮き輪に妙な重さが加わった。後ろを振り向くと、夫だった・・・・。で、やはり水中眼鏡をはずすや否や、“荷物を見張らないと・・・”とだけ私に伝えて、去っていく。
勘弁してくれーーーー。というか、もうここまでくると笑ってしまう。
昔、いとこの犬でぺコというのがいた。この一家はぺコを連れてあちこちを旅行していた。そして、ビーチで一家が荷物を置いて海へ入っている間、ぺコは荷物が心配で心配で、一歩もそこを離れられなかった・・・、という話を聞いていたのだが、今の夫は、ぺコのよう・・・・。君は犬になってしまったのか?!?!?!。
何度、埋めなおしても夫の不安は消えなかったようで、私が海に入ると上記のことが繰り返され、そのうち双方とも、荷物を見張るためにビーチに縛り付けられてしまったのが残念だが、非常に気持ちのよいビーチだった。
夕方、ようやくAjaccioに到着すると、そこは人で一杯。ホテルも満杯。地方都市といえど、バカンス中に都市で人にもまれたいと思わない私たちは、すぐに予定変更して、ここを脱出することにした。
クルマの中から、Ajaccio近郊のホテルへ電話をかけまくって、ようやく見つけたホテルへ急ぐ。
AjaccioとCorteのちょうど中間地点にある、Bocognanoという場所にある小さな宝石のようなホテル"Beau Sejour"。創業100年以上だとは、到着してから知った。山の中にひっそりと佇むこのホテルは、映画『シャイニング』を少しだけ髣髴させる。
併設のレストランの味も、今回の旅行中でのベスト。今度、コルシカに戻ることがあれば、このホテルを中心にしたスケジュールを組みたいと、強く思ったゼロでした。
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