ゼロの視点
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2004年05月17日(月) 現実と虚構のハザマにて

 前々から早くて4月、遅くて5月には一度日本へ行こうと思っていた。とはいえ、いつ戻るともハッキリ母には言えない状況。変に期待させて、それが延期となり、また母がガックリしてボケるというのは避けたかった。

 が、虫の知らせなのか、なんか母が変なような気がしてきたのは4月頃からだった。3月いっぱいは、そこまで“変?”という感じはしなかったのだが・・・・。

 4月になってから、どうやらまた母は痴呆っぽくなってきていた。昨年の9月に天国へ行ってしまった愛犬マルチンを夕方になると探し回っている様子。

犬小屋を覗く。

マルチンがいない。

大変だわ、マルチンが逃げちゃったっ!!。

そして、いつも一緒にいっていた公園へ行き、探し回った挙句、“ああ、そういえば死んじゃったんだ”と気づく、というのの繰り返し。


 どうしても、マルチンの死という現実を受け入れられない母。と同時に、日常生活での物忘れも激しくなってくる。毎日を無気力状態で過ごす、生きた屍。やばすぎる・・・・。

 5月のゴールデンウイークに母のところへ訪れた、母の妹夫婦とその娘であるM嬢から、報告メールが来た。現実と虚構のハザマを行き来する母のことが書いてあった。

 母に帰国の電話をすると、ちょうど5月17日にかかりつけの病院へ行くことになっていると言う。丁度いいので、それに同行するために航空券を購入、そして、本日となったわけだ。

 母の病院は新宿区百人町にある。母は軽度の糖尿があるので、もう長いことこの病院へ通っている。総合病院で、脳ドックにもかなり力を入れていることを知ったので、昨年母に検査をやってもらったのもこの病院。各科のコミュニケーションもよく、母の脳ドッグの診断は、長年かかりつけの担当内科医にもすぐ通知されるし、糖尿の数値は脳外科医に提示されるゆえ、こちらも楽。

 本日は、内科の日。病院の廊下で順番を待っていると、後ろでわしらの苗字を呼ぶ人がいる。振り向くと母の3歳下の妹N嬢だった。実は彼女もこの病院がかかりつけ。そして廊下で3人でおしゃべり。叔母は叔母でちょっと厄介な病気を抱えているので、彼女はその検査で本日来ているとのこと。

 こういった総合病院は、診察日の予約をとるのが非常に難しい。なので、たとえ内科とはいえ、母と一緒に診察室に同行して、現在の説明と脳ドックの結果を示したら、うまくいくと内科医自身がうまく連携して、明日にでも脳外科の予約を取ってくれるかもしれない?、と期待して行った私。

 一世一代の演技でもして、それを母の担当内科医にお願いしようと思っていつつ診察室に入ると、開口一番、担当医が“○○さん、最近物忘れがひどくなってませんか?。みんな心配してますよ”と話し出したので、私からあえて説明する手間が省けた。

 なので、この内科医の話に便乗させてもらって、私が日本に滞在するには期限があることなどを伝えると、医者同士の内線電話でさっそく明日、脳外科ではなく、脳神経内科の医者との予約を取ってくれた。ああ、ラッキー。

 診察室の前で、心配そうにわしらのことを待っていてくれた叔母N嬢にもそれを伝える。母が会計を済ませている間に、今度は母の6歳下の妹F嬢へ電話する。彼女とはこのあと一緒に新宿でランチする予定だったのだが、急遽明日の予約もとれたことだし、いっそのこと明日にランチを延期できるか?、と申し出ると、快くF叔母は受け入れてくれた。

 これから長いツライ検査を控えているN叔母にお礼と、応援エールを送って別れる。


 その後、新大久保にたくさんある韓国料理屋のうち、ことに怪しそうなビルの地下にあるレストランを選んで、そこに母と一緒にはいる。昔、この界隈に住んでたこともある私にとっては、非常に懐かしい場所でもあったりする。ゆえに、私は楽しいが、母はちょっと警戒気味。笑える。

 久々の冷麺とユッケに舌鼓をうった。

 その後、大型本屋に立ち寄る。母は私のあとをついて回る。ま、私と一緒にいる時間が楽しいというのはわかるのだが、これが私をちょっとイライラさせる。なので、つい“ねえ、あなたは自分がこれを読みたいっ、とかこういう本を探しているっ”というのがあるの?、などと詰問してしまう。

 大人のドリルなどというボケ防止の本もたくさん店頭に並んでいる。これを手に取りながら、母と物色。と同時に、心の中で“もう遅いのか?”などとちょっとうろたえる私。明日の脳神経内科の診察にて、少しは詳しいことがわかるといいのだが、現時点ではわからない。

 もし、アルツハイマーのような典型的な脳の萎縮が発見されたら、大人のドリルをやってもねえ・・・、というわけだ。

 それでも、ブラブラとショッピングなどをやり、帰りの電車の中でも母と話がはずみ、本日はつつがなく過ぎたように思った。

 


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