ゼロの視点
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2004年03月07日(日) フランス西部旅行パート2

 予定では、本日から姑宅を離れたかった。が、やっぱりそんなに簡単に飛び立てない予感・・・・。姑が既に、本日の夕方に彼女の友人宅でのアペリティフに私たちと一緒に出かけていく予定を組んでいた。

 なーんだ、やっぱり・・・・、と思っていたものの、訪問先がかなりエキセントリックな姑の友人の家だったため、ま、いいか・・・・おもしろそうだし・・・、という気持ちにになってきた。

 ランチは、姑宅にて。姑の妹とその息子がやってきて、5人で食事。午後1時にランチがはじまったのに、話に花が咲いて気がついたらもう午後5時半。慌てて、姑の友人宅へ行く支度を始める。

 これから出かける姑の友人Mは、77歳の画家兼アクセサリーデザイナー。そしてMの夫は、レンヌでもかなり有名だったらしい外科医のCで、噂だけでも色々ある、強烈にブルジョワな夫妻でもあったりする。

 ある意味、我が姑もただのブルジョワというだけでなく、それにボエムという言葉をつけるとピンとくるタイプなのだが、Mはそれの上を行くタイプ。たまに姑とMが一緒に写っている写真を見ると、二人のブルジョワ・ボエムが異様な存在感を放っており、時と場合によっては、魔女にさえ見えるから奇妙だ。

 姑とMは昔からの友人でもあると同時に、互いにライバル意識も丸出しだったりする。だから、彼女の家にアペリティフに行くだけでも、姑は色々と自分のファッションに気を使う。

 自分のファッションだけを気にするだけなら、いくらでもやってろ、と鷹揚に構えていられるものだが、姑の場合は、わしら夫婦の服装にまで口出しをしてくるから厄介だ・・・・(汗)。

 そんな姑の裏をかいて、私はあえて黒の皮のパンツに、ピッタリと身体の線が出るようなセーターを着用。すると、それを見た姑が、あーだこーだ言ってくる。しかし、あくまでも遠まわし。

 遠まわしの表現の中に、私が彼女の意見を汲み取り、服をチェンジすることが姑の願いだったのだろうが、私は見事に無視。すると、姑は今度は、自分の息子であり、わしの夫にちかより、ブツブツと私の服装について文句を垂れている。

 姑は、自分の息子を使って、私の服装を変えようとしていたのだろうが、その愚痴を隣の部屋で全部聞いていた私が、大きな声で

私「全部聞こえてますよ。普段から、“私はダイレクトな人間なのよォ”とかなんとか言っているわりには、やることがセコイですね。だから、嫌なんですよ、あなたのそういうところ。わかってます?!?!。いやらしいったらありゃしないっ。」

腹式呼吸でかなり大きい声で隣の部屋から姑に向かって叫んでみた。

 私の声が聞こえた瞬間、“あ、ヤベぇ”という感じでビクッと小さくなり、トイレに消えていった姑。ざまーみろ。夫も、私の不意打ちダイレクト攻撃で、思わずクスクス笑っていた。

 でも、本日はもう少し姑をつるし上げたい気持ちだったので、トイレの前で姑を待ち伏せして、さらに

私「で、何が言いたいんですか?」と尋ねてみた。

姑「どうもね・・・・(私の視線をそらしながら、小さな声で)」

私「どうもだけじゃ、わからん」

姑「c....cocotte........(尻軽女あるいは、娼婦の意味)」


 どうせ、そんなことだと思っていたので、大爆笑してしまった。

 娼婦だろうがなんだろうが、自分がそうじゃないという自信があればいいじゃないか?、と笑いながら反論すると、姑はムキになって、襲われたらどうするのだ、とやり返してくる。

 誰が、誰を、どうやって、襲うというのだ?!?!?!。こんなやり取りと聞いているうちに、とうとう耐えられなくなった夫がわしらの隣で大爆笑しはじめた。

夫「ママン、ゼロのことを襲おうって思う人いないと思うよ。で、もし万が一ゼロが襲われたとしても、もしそのおとこがゼロの好みだったら、喜んでゼロは楽しむかもしれないよ。」と姑に言い放った。その瞬間、この2人を相手に、自分の思う通りにできないことをようやく悟った姑は、さっさとクルマに乗り込んだ。



 さて、C&M夫妻宅に到着。姑の願いで、彼らの家にあるピアノで数曲演奏して欲しいということだったので、楽譜も持参。

 はじめてお邪魔するC&N夫妻宅は、本当にゴージャスだった。ゴージャスすぎて、笑いが出てきてしまったほど。夫のほうのCは、非常に無愛想で、スノッブな人間だと聞いていたので、こっちも距離を取ってしばらく観察。

 シャンパンを飲みながら、持参した楽譜のことを話すと、スノッブだったはずのCが突然饒舌になりだした。実は、彼は趣味でピアノを弾くだけじゃなくて、ハープシコードも数台所有していることが発覚。そしてそのうちの1台は彼が作ったものだということも教えてくれた。

 たまたま選んで持ってきた楽譜が、バッハ。それもハープシコードで弾いたら最高の作品ばかりだったので、すぐさま弾かせてもらえないか?、とCに頼んでみたら、即OK。

 最初のうち、Cは、ちょっとくらいだったら触らせてやろう、という感じだったのだと思う。が、私が感激して、どんどんバッハをハープシコードで引き続けたら、すっかりCのほうが感激してくれ、スノッブどころじゃなく、非常に優しく暖かな紳士に変身してしまった。

 『イタリア協奏曲』をハープシコードで弾くのが夢だったのだが、これがついに実現してしまった私。そりゃ、もう形容し難い嬉しさだ。嬉しくって、ノリまくって弾いているのだから、間違えるはずもない。自分でも言えるが、今回が一番いい出来で弾けたと思っている。

 その後、別の部屋に移動して、今度はCとグランドピアノで即興で連弾。どうやら私はすっかりCに気に入られたようで、Cが次から次へと秘蔵の楽譜コレクションを見せてくる。

 出発前に、私の服装にいちゃもんつけてきた姑も、すっかり『見てちょうだい、これが私の息子の嫁なのよ』とばかりデカイ顔している(笑)。やっぱりわかりやすい性格の姑だ・・・、と内心笑いながらも、連弾続行。

 自分の夫が、かつて見た事のないほど嬉しそうにピアノを弾いている姿を見た妻Mは、すっかりそれに喜んで、次回レンヌに来た時には、姑なんか放って、我が家に来て一日中、ピアノやハープシコードを弾くように、とまで進言してきた。

 ああ、これでまたひとつ、レンヌでの避難場所を確保できたっ、と違った意味で嬉しかったゼロでした。それにしても、ハープシコード・・・・・、一日中弾いていたーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!。
 


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