ゼロの視点
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2004年02月16日(月) トルコ旅行パート1

 本日は、トルコへの出発日。とはいえ、格安チャーター便なので、変な時刻に出発する。空港は午後18時に集合。計算すると、アンタリアのホテルには午前零時過ぎに到着になる。そう・・・・、これだけで旅行の第一日目は終わってしまうのだ。

 いつもの私だったら、“旅行会社のヤロウなめやがってっ!!”とキレるのだろうが、遅い出発のおかげで、前から出席したかった会合に顔を出す時間ができ、大喜び。旅行の準備も全部終わってないのに、早起きしてM嬢のお宅へ。そこには6人の在仏日本人マダムらが集合。そのあと、日本食レストランで皆で食事。非常に楽しかった。

 だが時計を見るとすでに午後3時を過ぎようとしていたので、慌てて家に戻り、最後の荷造り。なぜ、最後の最後にならないと準備ができないのか?、と我ながら不思議に思う。

 空港に到着し、航空券をゲットすると同時にチェックイン。スーツケースも渡してしまって身軽になったわしらは、同じ便に乗り込む人々の顔を眺める・・・・。誰が、一緒のツアーになるのか?!?!?!。

 格安チャーター便には、在仏トルコ人が里帰りに利用しているらしく、待合室には、格安旅行を楽しみたい旅行者連中と、里帰り組みのトルコ人の二つのグループに自然と分かれて座っているところが面白かった。

 機内食は、マズかった。予想通り、アルコール飲料は有料(涙)。学校が休みの時期だけあって、子供らが機内を走り回る・・・・・、スチュワーデスの呼び出しボタンを延々と押し続けるガキ・・・・。完全無法地帯になっているのが、なんともたまらん。

 暇つぶしに、機内DUTYFREEカタログを見ていると、なんとマルボロライトロング・1カートンが15ユーロで販売されていることを発見。現在、フランスではこれは1箱、5、10ユーロで販売されているゆえ、どのくらい私が驚いたか、想像していただきたい。もちろん、即購入。そんな私を横目に、“ニコチン中毒”とイヤミを言う夫(←嫌煙者)。

 ま、それでもたかが3時間の空の旅。あっという間に小雨の降るアンタリアに到着。羊の群れのように、空港を出て、自分の乗り込むバスであろうところまでフラフラと進む。駐車場には何台もの観光バスが止まっていたが、どうやらわしらのバスは黄色のものらしい。

 スーツケースをバスの運転手に渡すと、小柄な彼はトランクに身をかがめるようにしてそれを入れる。幸いなことに、トルコ語でありがとうは、フランス語と同じでメルシー。なので、すっと感謝の言葉を口から出すことができるのがありがたい。

 バスに乗り込み、そうっと周りの人を眺めてみる。ふうーん、これが今回の旅行の仲間となる人たちなのか・・・・、と。定年退職組は、どうやらいないようだ。ま、彼らは金も時間もあるから、わざわざこんな時期(学校が休みの期間ゆえ、旅行へでかけようと企むフランス人が多い時期ともいえる)を選んで、格安ツアーに参加するはずもない、というわけだ。

 空港からホテルに移動する間に、トルコ人ガイドから簡単な挨拶と説明があった。そして、“質問は?”とガイドが問うてきたので、すぐさま手を挙げて、気温と天候について質問。この問いに対して、ガイドは、

「自分も同じ飛行機でパリからアンタリアに到着したばかり。だから、トルコの気候についてはわかりません。ま、最悪大雪になってバスが立ち往生となってしまったら、その時は当社がなんとかしますから安心してください」

と答えてきた・・・・。この答えを聞いた瞬間、もうどうでもいいや・・・、と思えてきた。とにかく運を天にまかせるしかないな・・・、と。

 ホテルに到着したのが午前0時過ぎ。ついさっきトランクに入れたばかりの荷物をまた丁寧に一つ一つ取り出してくれる運転手。いやあ、こういう仕事も大変だな・・、と思いつつ、自分のスーツケースを見つけるや否や、ホテルのロビーへ入る。その後、与えられた部屋へ入り、適当にくつろいだあと、このまますぐに寝るには惜しいので、どこかフラフラと散歩してみることにした。

 ホテルを出ると、そのまん前に停車してあるバスのドアや、トランクがまだ開いたままになっているのに気付いた。そして、トランクのところにもう一度目をやると、そこに腰をかけるようにして、下を向いて休んでいる運転手の姿を発見。ああ、やっぱりこういう荷物の上げ下ろしは疲れるんだな・・・・、とつくづく思った。

 そんな彼を横目に、静まり返った街中を適当に散歩。遠くに灯りを見つけたのでその方向へ進んでみると、小さな商店が一軒、まだ営業していた。ユーロしか持ち合わせてない私たちだったが、なんとか交渉してユーロで買い物をさせてもらい、おつりとしてトルコリラをもらうことにした。

 やたら“00000”とゼロの多いトルコ紙幣ゆえ、トルコに到着したばかりの観光客は皆一度は混乱する。おまけに、心のどこかに“ぼられるんじゃ?!?!”という不安もあるので、よけい混乱する。が、店主は私たちがまるで知恵遅れのように、何度も何度も計算して、金を数える作業を、私たちが納得するまでやらせてくれた(笑)。

 現地人との最初のコンタクトもうまく行き、ビールもゲットして気分がよくなった私たちはホテルに戻ることにした。そしてホテルに近づくと、そこには何人もの警官と、救急車らしきものが止まっていることに気付く。

 いつものようにヤジウマなわしらは、小走りにそこへ近寄る。救急車の周りにいる人間の顔を見渡すと、わしらのガイドの顔を発見。すかさず彼に状況を尋ねてみることにした。

ガイド「運転手に問題が起こったんです」

わしら「運転手が、なんか悪いことでもしたんですか?」

ガイド「いや、そうじゃなくて、病気になったんです」

わしら「なるほど・・・」


そして、数秒の沈黙のあと、彼は次のように言った。

ガイド「で、病気になって、今、亡くなりました....」


 
運転手が死んじゃった?!?!?!?!?!。
ひえーーーーっ。
ってことは、さっき見た運転手の姿は、なんだったのだ?!?!?!。
もしかして、死ぬ直前だったのか?!?!?!。
それともすでに具合が悪くて、座り込んでいたのか?!?!?!。
あの時、運転手に声をかけていれば彼は助かったのか?!?!?!。

わからん、わからん、わからん・・・・・・・。


 上記のことを矢継ぎ早にガイドに質問。彼もほとんど状況が読めてないので、答えることさえできない。ただひとつ、運転手は心臓発作でアッという間に亡くなってしまった、という事実。救急車の中を見ると、救急隊員がまだ心臓マッサージを続けている。

 私はあえて運転手の顔をみないようにしたけれど、夫はバッチリ見てしまったらしい。夫曰く、彼の顔は“真っ白”だったとのこと。

 冬でも比較的暖かいアンタリア。が、ここ数日めっきり冷え込んできているアンタリアで、深夜に荷物の上げ下ろしをして、どうやら心臓に多大な負担がかかってしまったとの推測・・・・・。

 その荷物ってのが・・・・、私たちのものなわけであり・・・・・。どこかで彼の死に遠隔的にでも加担したような、形容し難い罪悪感を払拭しきれないわしら。ガイドも冷静を保っているものの、実はかなり混乱しているのがよくわかる。

 明日からの観光はどうする?。
 もし、これが運転中のことだったら?。
 

 また、あらたにいろいろな疑問が湧いてくる。


 とりあえず、ホテルの部屋に戻ったものの、まだ興奮している私たち。それと同時に、こんなに簡単に人というものが、ポックリと死んでしまうという現実に直面して、奇妙な感覚がまとわりつく。深夜に一家の大黒柱の突然の訃報を聞いた家族は、さぞかし辛かろう・・・・・。



 夫と色々と話をしているうちに、もう午前3時過ぎ。明日の出発時間は午前9時半。ああ、ツライ。


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