ゼロの視点
DiaryINDEXpastwill


2004年01月09日(金) 府中刑務所

 ふと夜遅くテレビをつけたら、フランス人元受刑者の証言をもとに、府中刑務所についてのドキュメンタリーが放映されていた。

 集団行動の練習の一貫での、軍隊式行進。この訓練が非常に厳しい。そして、前へ習え、休め、直れ、などのおなじみの訓練がある。また、日常生活の細かい規則に従い、工場での作業中は脇見厳禁、仕事前と終わりには、きちんと整列。ランチ後の8分だけ、自由な時間があり、それがすぎると合図がなされ、今までの楽しみを瞬時に捨て去り、小走りに仕事場へ戻っていく光景等。

 再犯者が多い刑務所だけあって、社会復帰後のことを考え、やたらに厳しいのが府中らしいが、ここまで重箱の隅をつつくような細かさってのもねえ・・・、等と思いながら番組を食い入るように見る。

 また、外国人犯罪者で日本語が話せる人は大阪へ行き、そうじゃない外国人は府中へ送られるとらしいが、本当?!?!?!。色々調べてみると、本当かどうかわからないにしても、日本語がわからない外国人が府中にぶち込まれ、そこで日本語だけで命令されて、日本人のように即座に反応できず、その態度を“反抗的”とみなされ、独房へ送り込まれたりもしているようだ・・・・・。

 さて、規律という規律を全力で逃げ切って数十年という夫。でも、ここでいう彼にとっての規律はあくまでフランスのもので、それでもそれが嫌で、嫌でたまらないという彼にとって、日本の規律社会をもっと激しくさせた府中刑務所の中の映像は、私の想像を越える、遥かに激しいショックを彼に与えたようだ。

 また、厳しい訓練が成されている廊下などが、異常にピカピカ光っているのも、彼の精神的恐怖に拍車をかけたようである。

夫「うちの床より、ピカピカ光ってるよ・・・・・」

 厳しい訓練を見ながら、

夫「サディックだっ!!!」とか「恐ろしすぎる」等、毎分ごとにひとりでブツブツ呟いている。

 これらの厳しい訓練について、フランス人元受刑者らは、“軍隊”という形容を何度も口にする。それに対して、府中の責任者たちは、「とんでもない、軍隊などとはまったく関係ない、ただ日本の会社、学校でも行われている基本的なマナーと他者を尊重するという訓練でしかない」と反論。

 もう爆笑してしまった。確かにここには、“軍隊”という形容を計るモノサシが平均的日本人とフランス人の間では、まったく違うというのがある。言われてみれば、学校にしても、会社にしても、整列する習慣はいまだにあるし、朝礼なんかもあったりするところもある。そして、朝礼の後、体操したり・・・・。

 そして、規則をやぶったモノは、村社会から追い出される。

 上記の、府中の責任者の言葉は、夫をもっと怖がらせた(笑)。厳しい集団行動の練習を徹底的に繰り返し、繰り返し、個を完全に放棄させていくように彼には見える、マインドコントロールの一貫が、非常に怖いらしい・・・・。ま、私でも怖いと思うが・・・・夫のようにまで反応ができん。

私「噂では15分おきに見張りがくるから、自殺も15分以内にしないと死に切れないんだってよ」

とすでに番組を見てすでに相当怖がっている夫に、追い討ちをかけるように耳元で囁いてみる。

私「で、おまけに厳しい持ち物検査があるから、簡単に死ねるような道具を入手することも難しいしねぇ・・・・・。」

夫「ってことは、どうやったら死ねるんだよっ?!?!?!」

私「人によっては、靴下を口の中に突っ込んだりしてるらしいよ。でも、見張りに見つからないようにしないといけないから、自殺を図る時も時間厳守ってわけだね・・・」

夫「・・・・・・・(うつむきながら、ショックで無言)」


 この番組を見終わった夫は、しみじみと、日本の刑務所にだけは入りたくないと何度も何度も繰り返して言っていた。例え、発展途上国の衛生状態がよくない刑務所でも、または、囚人同士で平気で殺し合いができてしまうような刑務所でも、彼にとっては、規律地獄よりたいそうマシらしい。

 どうやら、彼はすでに囚人の気持ちになっているようだ。わかりやすいとはいえ、まず刑務所に入らないでいい状況を考えたほうがいいと思うんだけれどねぇ(笑)。

 怖い、怖いと未だに言いつづけている夫、そんな夫を見ていると、私のほうが怖くなってくる。それと同時に、すごい国に住んでたんだなぁ・・・、とも。さすがに、日本のSMが、世界中の愛好家から評価されるのがよくわかったような気がした。

 精神的ないたぶり、というのに日本人は非常に長けてるなぁ・・・・・・。


Zero |BBSHomePage

My追加