ゼロの視点
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日中は、ギャラリー・ラファイエットで買い物。買うだけかって、ヘロへロに疲れた私たちは、そこからメトロを使わずバスで帰ることにした。バスは満員だったが、シルバーシートに座っていた若い黒人女性がすかさず母の姿を見て、すぐに席を譲ってくれる。
母はそこに納まり、しばらくたってのこと。母の向かい席(これもシルバーシート)には、若い巨漢デブ女が座っていた。彼女はひっきりなしに一人で喋っているように見えるが、実は携帯で誰かと会話しているのだ。携帯を直接耳に当てず、イヤフォンみたいなのを耳にはめ込んでいる。
彼女は周りも気にせず、ベラベラ話す。本当に相手が存在しているのか?、というほど彼女だけが話しているように見える。そんな彼女に、しばらくすると周りの人がいやでも注目するようになった。
恐らく、彼女は下級公務員。疲れたという理由で、一週間の病欠を取ったなどと楽しそうに話している。そんな彼女の目の前に座っている母は、会話はわからないが、とにかくひっきりなしに話している彼女を、ビックリしたような目で見ている。
そんな母を見て、こちらもつられて笑い出すと、私の隣に立っている人までつられて笑い出した。で、お互いに“たまんないですねぇ・・・”というようなジェスチャーで応答。
そんな時、次のバス停から高齢で白髪の女性が乗ってきた。彼女はシルバーシートなどに優先して座れるカードを持っている。そしてそのカードを延々と喋りつづける無神経デブ女に見せるが、デブは無視。
そこでカチンときた高齢女性は、「そこに、年寄り優先って書いてあるの見えないの?。」と詰問。
デブ「ああ、私近眼だから見えないわ」
高齢者「でも、あんためがねかけてんじゃないのっ」
デブ「あたし、貧乏だからめがね作りかえられないの」
高齢者「でも、なんでもいいから高齢者の私に席譲ってちょうだい」
デブ「あたし、つかれてんのよ。あたしの目の前にいる彼女(つまりは私の母)の席でも奪ったらどお?」
高齢者「いつまでも、そんな戯言いっていると、あんたの膝の上に座るわよ」
デブ「どうぞお好きなように」
ここで、誰もがデブがなんだかんだ言って交渉に勝ったと思った。が、本当に高齢者は、デブ女の膝の上に座ってしまった。交渉内容がまったくわからない母は、突然、デブの上に高齢者が座ってしまったという事実しかわかるはずがなく、ますます驚いている。
こうしてデブをクッションとして座りはじめた高齢者が、周囲の人に話し掛けるような大きな声で、
高齢者「これがデブじゃなくて、若いキレイな男だったらいいのにねえ」
と発言し、ここで私は笑いが堪えきれなくなって、一番に大爆笑をしはじめると、ほぼバスの乗客全員がそれにつれられるようにして、大爆笑をしはじめた。
バスを降り、一通り今車内で起こったことを母に説明すると、時差はあったとはいえ、内容を知った母は、爆笑していた。
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